2017年12月22日、遠征先のカナダから帰国した清宮海斗が後楽園ホールのリングに姿を現すと、会場は静まりかえった。風貌がまるで別人だったからだ。茶髪のスタイリッシュな髪型、一回り大きくなった肉体……。しかし変わったのは見た目だけではなかった。翌1月、拳王が持つGHCヘビー級のベルトに挑戦。そこで繰り出された新技の数々に、ノアの明るい未来を見出したファンも多いだろう。 　小橋建太もまた、プロレスリング・ノアOBとして彼に大きな期待を寄せている。小橋はいまの清宮をどう見ているのか？　清宮が今後、歩むべき道とは――？ ――清宮選手、今後の目標は？ 清宮海斗（以下、清宮）：年内にまたベルトに挑戦することですね。帰国してから拳王さんに挑戦して、その後、北宮選手、杉浦選手、丸藤選手、潮﨑選手とシングルマッチをして、負けが続いているので。 小橋建太（以下、小橋）：ただ勝敗だけ大きくクローズアップされるような試合になっているんじゃないかな。試合内容で「清宮はここまで来た」っていうものが俺には伝わってきていないから。どうだった？ 清宮：タイトルマッチが終わって気持ちが沈むのではなく、また次の目標に向けていろんなことを試しながらやっていたので、自分としてはただ負けたというわけではないと思うんですけど。お客さんから聞くのは、期待値を上げきれなかったと……。 小橋：期待値を上げきれなかったわけではないと思う。清宮に期待しているファンのみんなからしたら残念な結果かもしれないけど、清宮の中では一歩一歩、前に出ている思いはあるだろうし。 清宮：全部の試合が楽しかったんですよね。カナダから帰ってきてからの試合は本当に、毎試合楽しい。負けているんですけど、楽しんでいるというのがお客さんに伝わっていたらいいなと思います。 小橋：リングに上がることを楽しめたら、それが一番だと思う。試合をやってる本人が楽しめなかったら、見ているファンのみんなだって楽しくないよ。本人がリングに上がる喜びを感じながら試合をしている。その試合を見て、ファンのみんなは喜びを感じるはず。結果が出ない日々が続いていて本人としてはどうなのかなと思っていたんだけど、心配することなかったな。 清宮：いまはプロレスが楽しいだけです。 小橋：タイガースープレックスをフィニッシュホールドにしてるけど、すごくいいと思う。俺は嫌っていうほどタイガースープレックスを食らってきたけど、あの技は効くよ。清宮はブリッジが非常にキレイだし、合っていると思う。技っていうのは単にかけるんじゃなくて、その技に思いを持っているということが一番大切だから。 　ただ、横浜文体の試合を見て思ったのは、もっと力技があってもいいのかなと。華麗な技はいくつかあったんだけど、せっかくいい感じで体ができてきたのに軽い感じがする。これからもっともっとビルドアップしていく体なんだから、力でねじ伏せるような闘いを見せてほしい。そうすればタイガースープレックスが余計に重みを増してくると思う。 　あとは打撃。三沢さんのエルボーでもいいし、俺のチョップでもいい。自分に合うと思ったものをやればいいと思う。キックが合うと思えばキックをやればいいし。清宮は無限大の可能性を持っているんだから、自分が試してみて合うことはやっていけばいいし、合わないことは排除していけばいい。いろんなことを試していって、自分のものにして、清宮海斗というレスラーを作っていってほしいなと思う。 清宮：ちゃんと試合の中で考えて、出していきたいと思います。 小橋：今度解説に行くとき、チェックするからな。 ――この連載に出てくださったレスラーのみなさん、小橋さんのアドバイスを実践しているんですよ。黒潮イケメン二郎選手はムーンサルトの練習に励んだり、菊田一美選手は空手技を取り入れたり。 清宮：僕も生かしていきます！