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メモをとれば過去と未来がわかるようになる〈魂が燃えるメモ〉

いまの仕事楽しい?……ビジネスだけで成功しても不満が残る。自己啓発を延々と学ぶだけでは現実が変わらない。自分も満足して他人にも喜ばれる仕事をつくる「魂が燃えるメモ」とは何か? そのヒントをつづる連載第48回

魂が燃えるメモ コミュニケーションには「ミラーリング」というテクニックがあります。誰かと話しているときに、相手のしぐさを真似るというものです。相手が腕を組めばこちらも腕を組み、相手が足を組んだら足を組む。そうしていくうちになんとなく相手との間に親近感が生まれ、恋愛や取引に役立つというものです。いわゆる「相手に親近感を与える方法」です。

 実際にやってみるとわかりますが、これは確かに効果があります。私は昔家庭教師をしていたのですが、よくこのミラーリングを使っていました。家庭教師は教え方云々の前に、まず相手に気に入られなければなりません。さもなければ「んー、なんなとくイマイチ」で切られてしまいます。初対面ですぐに相手と仲良くならないといけない場面ではうってつけです。

 以前友人の家に遊びに行った時、2歳くらいの子供がいました。初対面だったので、当然向こうはこちらを警戒しています。その日はみんなで温泉に行く予定にだったので、仲良くならねばとミラーリングを使ったところ、途端に警戒感がなくなり、きゃっきゃとはしゃぎ出して、おもちゃで遊んでいる自分を「見てみて」とせがまれました。

 私は学者ではないので、科学的に論じるつもりはありませんが、ミラーリングはおそらく脳が本来持つ機能的な部分に働きかけているのだと思います。その子はまだほとんど会話という会話はできませんでした。「パパ」とか「ママ」とか「佐々木さん」とか「見て」とか「こっち」とか単語でやりとりするレベルです。だからこそ会話以前の仕草の重要性が浮き彫りになって理解できました。

 このようにテクニックはある場面ではとても役に立ちます。しかし、それは決して万能ではありません。テクニックは誰にでも使えるように切り出されたものだからです。「誰でも使える」とは過去の積み重ねを考慮せずに、目の前にある現在の状況だけで作られていることを意味します。

 今、ネットにも書店にもそうした「○○する方法」というタイトルが溢れかえっています。そして、そこには「人生を変える」というキャッチフレーズが枕詞のように添えられています。しかし、人生というのは積み重ねであり、その場その場に対応する方法論だけでどうにかなるものではありません。

 そういった方法が悪いとか無駄というわけではありません。その場その場をうまくやる知恵だって大切です。それがなければ私も家庭教師を続けられなかったでしょう。ただ、人が深く悩んだ時に直面するのは、「自分がわからなくなった」とか「自分がどうすればいいのかわからない」とか「これからどう生きてけ行けばいいのか」といった、人生そのものに対するスタンスです。

 人生は自分が生まれてから死ぬまでの大きなスパンなのですから、当然その対応も自分の過去から未来まで見つめなくてはなりません。「誰でも」「今すぐ」といったインスタントな方法論では、こぼれ落ちる領域が確かにあるのです。そして、ここに自分の感情や感想をメモする意味が出てきます。

 私たちは刺激に反応します。どこかに出かけたり、誰かと会ったりすると、「こうなんだな」という思いが自然と浮かび上がってきます。これまでに自分が積み重ねてきた人生、良いことも悪いことも含めた全ての過去が反映されています。その経緯にさらに思いを巡らすことで、私たちは自分を理解できるようになります。

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人は行動だけでは成長しません

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