仕事

「残業させない」の本音は「自宅でやれ」。私用PCを持って定時退社する理不尽

「残業は許さない」=「残業は自宅でやれ」

 会社は「残業は許さない」という一方で、自宅など会社外での作業については「関知しない」と公言しているというのだから、これは暗に「残業は自宅でやれ」と言っているようなもの。大企業傘下会社らしく、データの持ち出しなどについてもいちいち細かくチェックされるシステムが導入されており、社用パソコンを社外に持ち出すことなど不可能。  そのため、ひとつの仕事を始める際には「会社でやること」と「会社外でやれること」といった風に分けて、業務用パソコンと私用パソコンのふたつを使い分けるという、非効率極まりないやり方で業務を進めている。 「会社でやることが終われば、とにかく早く社外に出て仕事をしないといけません。アホらしくてやってられないと誰もが思っていますが、親会社のいうことを聞いていたら、こうするしかない」  「働き方改革」が導入されて以降、残業をすれば「計画的・効率的に仕事ができていない」と指摘され、人事査定にも響くらしいと聞けば、こうしてプライベートな時間を仕事に割かざるを得ないと話す松井さん。  会社では「時間的に」できない作業を自宅などでこなすために、高スペックのパソコンや高額な会計ソフトやデザインソフトを購入せざるを得ない社員もいるというから、働き方改革が、現場に新たな無理を強いているだけの状態になっていると断言する。さらには……。 「悲惨なのは中間管理職以下のおっさん社員ですわ。ぼーっと椅子に座って残業代を稼いでいたのに、それもナシに。会社にいる時間は、パソコンの使い方や資料の作り方を若手に聞けたけど、自宅に持ち帰らなければならないとなると、一人で全部やんなきゃいけないでしょう? 当然一人でできるわけないから、若い社員に電話して聞くんです。それでもちんぷんかんぷんで休祝日明けに上司の前で『なぜやってこなかった』とどやされている。まるで宿題をしてこなかった“のび太くん”です」  若手社員も会社にいる間は自分の業務で精いっぱい。キーの打ち間違いで「英語入力」になっておろおろしているようなレベルのおっさん社員からあれこれ聞かれて仕事にならず、できるだけ会社にいたくない、という若手社員も増えているという。 「働き方改革」が叫ばれるようになってどれくらいが経っただろうか。その「改革」とやらがあまりにも非現実的で、いわゆる「社畜」を大増産させるものに過ぎなかったか、みな薄々と気が付いているはずだ。<取材・文/山口準> ― 不満続出! “働き方改革”のリアル ―
新聞、週刊誌、実話誌、テレビなどで経験を積んだ記者。社会問題やニュースの裏側などをネットメディアに寄稿する。
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