超絶ブラックな下請けIT企業「残業代なんか払ったら潰れる」
労働環境の改善、残業代や給与のアップ。“働き方改革”が叫ばれて久しいが、その効果を実感している人がどれだけいるのだろうか。今回は現場で働く様々な人たちを取材。企業がなにかしらの取り組みを行う例も増えてきたが、特に下請けの小さな企業においては、そもそも“様々な無理”のうえに成り立っている場合も多く、その存在価値さえ危ぶまれてくることも……。
「上司から会社と“三六協定 ”を結んだ、と通知されたのですが、それが何なのか誰も知らないし、知ろうともしません」
もはや諦めたかのように、乾いた笑みを浮かべて話すのは、東京都内の中小IT企業に勤務する蟹江さん(仮名・32歳)。
この「三六協定(さぶろくきょうてい)」とは、労働基準法第36条に基づく労使協定の俗称で、一日八時間、週に四十時間を超える労働が発生する会社などでは、労組や社員の過半数を代表する者との間でこれを締結し、労働基準監督署に届け出なければならない。
締結以前からすでに、毎日三時間以上の残業が当たり前になっていた蟹江さんの職場は、すでに「違法状態」だった、ということになる。
「上司は労使関係の法律を少しかじったらしく、これで労働環境が良くなる、残業代だって出るかもと社員に触れ回っていたのですが……」
三六協定なるモノが締結されて以降も、お察しの通り残業は減らず、労働環境に変化が現れることはなかった。それどころか、このお人好しで善良な上司が「残業はするな」と事あるごとに言ってくるために、うっとおしい存在になり、会社内では浮いた存在になってしまったというのだ。
「そもそもの話なんですが……。うちは中小の、吹けば飛ぶような孫請け・ひ孫請けのIT企業です。いかに安く仕事を請け、早く納品するかということだけですから、いろんな無理のうえに成り立っている事をみんなが知っています。給与が安いことも、残業代が出ないことも、ボーナスが出たり出なかったり、出たとしてもわずかだということも、分かったうえで仕事をしているのですから」
蟹江さんの在籍する企業は、主に超大手IT企業の子会社や孫会社から仕事を請け負っている。とにかくカネをかけずに作業し、いかに早く納品するか、ということだけが課題である。他にもっと安く仕事を請け負う会社があれば、蟹江さんの会社など簡単に切られてしまい、明日にでも仕事がゼロになる。
だからこそ、常に「業界最安値」で仕事を請け負い、社員は残業や休日返上で無理をし、時には体を壊してまでも仕事をしないと、生き残る可能性も、存在価値さえもなくなってしまう。

下請け企業では“働き方改革”なんてほど遠い…
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