大学との敵対が鮮明化し炎上騒動に……
ところが、『大学の食堂が混みすぎててブチギレる陰キャラの映像』という動画を投稿した4月22日以降、ステハゲ氏の携帯に所属学部事務室から、着信が入るようになった。
彼は「番号検索で調べたら公表されている大学の番号と似ていたので察しましたが、留守電も入れないので無視していた」そうで、変わらず動画投稿を続けていたが、続く5月11日、Twitter上で学生に
ソーシャル・メディア・ガイドライン遵守を求める中央大学公式アカウントが、彼を突如ブロック。大学との敵対が鮮明化し、この件は横浜国立大学の人気YouTuber背広(スーツ)氏が“中大広報室は稚拙”と批判する動画を投稿するなど、様々な反応をネット上で引き起こす。
さらに5月中旬、同じ番号からの着信が親の携帯にも入るようになり、ついに彼は事務室に電話をかけ、そのやりとりを撮影した動画を投稿してしまう。すでにこの動画は削除されているが、本人確認を口実に「事務室で直接話したいことがある」という職員と、「僕が本人なのでいま電話で説明してください」という彼の、10分弱に渡る押し問答の様子は、削除時で20万再生を記録した。
結局、この動画内で大学の非公表の番号を晒してしまったことなどが直接の原因となり、所属学部から“注意書”を受け取った彼は謝罪動画を投稿。一部の動画を削除・修正したことを報告し、一定の非を認めた上で自らの言い分を主張した。
日刊SPA!取材班が調査したところ、他大では学生YouTuberに対し、これほど厳しい対応は見られない。また、確かに彼の動画は自虐ネタ(中大をイジるもの)など、過激とも取れる内容もあるが、基本的には愛校心の感じられるものが多く見受けられ、大学公式アカウントからブロックされた際の嘆きぶりからも、それは伺える。
「
ガイドラインに書かれていたのは、“中大生を名乗ってSNSで過激な発言をするのはやめて”とかありきたりなこと。特に違反している意識もなかったので、純粋に悲しかったですね。動画配信の文化や炎上する/しないの一線は、大学より僕の方がわかっていたつもりなんですが…」
現在、炎上騒動をいたずらに蒸し返す気はないというステハゲ氏。先述の中央大学当局との電話騒動でも「ソーシャル・メディア・ガイドラインに沿った行動を」との言及があったのみで、彼自身が呼び出しを拒絶したこともあり、未だどの動画やシーンが問題視されたか具体的な説明は受けてないらしい。
そこで日刊SPA!取材班は「どのような動画・シーンに批判や苦情が寄せられたか」「ステハゲ氏のブロックを解除する予定はあるか」など、いくつか質問事項を中央大学広報室に送ったが、詳細なコメントは得られなかった。
専門家はこの一連の騒動をどう見るのか。企業のメディア対応・危機管理などを専門とする広報コンサルタント・山口明雄氏はこう語る。
「肖像権に関しては、背景に顔の写り込んだ学生本人から苦情が寄せられたら、大学は対応せざるを得ないでしょう。テレビでもはっきり顔がわかる場合、同意書(名前だけ書かせる簡単なものですが)を書いてもらうこともあります。また、いきなり注意書を送るなら高圧的すぎると思いますが、電話でアプローチがあったならまず真っ当な手順です。一方、ステハゲさんが電話の様子の動画をネットにすぐに上げたのは適切ではありません」
やはりリスク管理という守りの視点に立てば、一部動画の削除・修正も致し方ない部分はあるようだ。では、中央大学の対応は理想的だったと言えるのか。
「ネット上の感情の対立が炎上を引き起こす原因のひとつです。公式アカウントがいち学生をブロックするのは短絡的だったと思います。ステハゲさんが悲しむのは当然。逆にいえばブロックという対立構図を大学が先に示さなければ、ステハゲさんもより冷静に対処できたかもしれません。電話に出ないなら留守電やメール、TwitterのDMでも個別で連絡の取りようはあったはず」
皮肉とも言えるが、この騒動で彼のTwitterフォロワー数は中央大学公式を上回り、現在は自称“ミスター大東文化大学”として動画投稿を続けている。
ちなみに大東大に関しても散々ネタにしている彼だが、大東大からは今のところ特に苦情はないそうだ。
今後の活動について、「諸々配慮はしますが、中大ネタも含め基本スタイルを変えることは考えていません。今後はオタク向け筋トレ動画なんかも考えていて、“謝罪系”として無関係なのに謝る広告付き謝罪動画もちょいちょい出そうかと思っています。
不謹慎なので普通は謝罪動画って広告付けないんですけど。人が謝る姿ってみんな好きだし」とステハゲ氏。
“誰の指示でもなく中大にタックルし続ける男”とのコメント評は伊達ではないようだが、彼が再び“ミスター中央大学”を名乗れる日が来るのか。
ステハゲ氏と大学が良好な関係を築いていくことを期待したい。<取材・文/伊藤綾>
■ステハゲ SUTEHAGE(ミスター大東文化大学)プロフィール
2014年大東文化大学スポーツ科学科入学(3か月で中退)→2015年Liverpool John Moores University入学 (1日で中退、帰国)→2016年都内某名門私立大入学
Twitter→(
@sutehageyoutube)
YouTube→
https://www.youtube.com/channel/UCI6ujqDDvRUt6VXiZgNkEtA
■山口明雄(やまぐち・あきお)
アクセスイースト 代表取締役。東京外語大学を卒業後、NHKに入局。日本マクドネル・ダグラスで広報・宣伝マネージャーなどを歴任。現在はアクセスイーストで国内外の企業に広報サービスを提供している。著書に『
危機管理&メディア対応 新ハンドブック』(宣伝会議刊)など
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):
@tsuitachiii