日本の農業が危ない。種を保存する「シードバンク」に取り組む人たち
これまで日本の多様な品種を守ってきた「種子法」が今年4月に廃止され、日本の農業は大きな転換点にさしかかっている。そんななか、「多様な品種・種子を守る」ためのさまざまな動きが全国各地で起きている。農産物の種子を保存する「シードバンク」もその一つだ。
とんがり屋根の小さな小屋の扉を開くと、壁際の棚にさまざまな形の種が入った瓶が並んでいた。
北アルプスを望む長野県池田町の郊外でゲストハウスを営む臼井健二さん、朋子さんが2012年に始めたシードバンク「種センター」。ここでは、菜園やゲストハウスのある敷地の片隅に、現在200種類を超える農作物の種が保存されている。
臼井さんがシードバンクを知ったのは、生活技術の普及のため訪れたバングラデシュでのことだった。
「向こうでは有機農業の復活が盛んで、バングラデシュ国内だけでシードバンクが50か所、米の品種は3000種も保存されていました。種を集めて預かり、それを倍にして返していました。そうしてできた農産物のほうが、土地に合っていておいしかったんです」(健二さん)
バングラデシュでは1960年代に農薬・化学肥料を用いた“緑の革命”と呼ばれる大規模農業が始まり、作物の収量は2倍になったという。
「でも機械化で仕事がなくなったり、環境悪化で魚もいなくなったり。農薬の影響か皮膚病が発生したりと、マイナス面もたくさんありました。農産物の種も自家採種していたものが、だんだんと毎年買わなければならなくなってしまった」(同)
大規模農業が始まり、収量は増えたがマイナス面も増えた
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