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日本の農業が危ない。種を保存する「シードバンク」に取り組む人たち

種子の「著作権」を主張する企業も、自然界の法則まで開発したわけではない

種の保存庫

かぼちゃや豆、トマトなど、棚ごとに野菜の種が保管されている。寄付制になっていて、種を借りた人はノートに種の情報を記帳し倍にして返すのが原則

 そんなバングラデシュでの体験をもとに始めたのが「種センター」だ。臼井さんたちは、帰国してから種の交換会を始めた。種を倍にして返す仕組みも取り入れ、余剰分は建物に保管した。地元の人が採った種を送ってきてくれたこともあったという。 「種は一人でずっと抱えていると劣化します。みんなで分かち合うと、後で何千倍にもなって帰ってくるんです。年に5回ほど開く『種カフェ』での種の交換会では、東京からも人がやってきます。種を通じて、人的ネットワークも広がりました。ここの種のいいところは、撒けば増えるところ。何よりも、毎年買わなくてもいいのがいい」  一方、日本の現状を見れば、種屋やホームセンターで売っている野菜の種は、9割が外国で生産したものだ。それも「一代交配種」=F1種が多く、その種を翌年撒いても実がならない。農水省は「知的財産権の保護」の観点から、今後新たに企業が開発した種の自家採種を禁止していく方針だ。違反すれば重い罰則が科せられる。 「自然界は、種が落ちれば芽が出て実がなるもの。新しく開発した品種の保護はあってもいいと思いますが、企業はその自然界の法則まで開発したわけではありません。本来、農産物の著作権は自然界にあるのですから」と臼井さんは首を傾げる。自然の営みと、農業の歴史を忘れた現代農業生産への率直な疑問だった。 ※『週刊SPA!』6/26発売号掲載記事「いよいよ[日本の種]がヤバい!」より 取材・文・撮影/宗像充
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週刊SPA!7/3号(6/26発売)

表紙の人/ 佐野ひなこ

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