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綾野剛に北川景子が大爆発『パンク侍、斬られて候』奇才・石井岳龍監督インタビュー

パンクとは“心の殻”を爆発させるということ

「『30歳すぎたらもう余生』『パンクは30歳で終わり』と思って、燃え尽きる覚悟で走り抜けました」

 タイトルにある“パンク”や、発言のなかにもでてくる“爆発”は、石井監督の作品を表すキーワードでもある。しかし、当の本人はいたって沈着冷静。 「僕にとってパンクとは、『これは正しい』っていう、自分のなかの凝り固まっていた考え方、つまり“心の殻”を爆発させ向こう側に行くということ。世の中、一方的に『正しい』、一方的に『正しくない』っていうのはあり得ないし、いろいろなモノの見方がある。  クソ間違いだらけだけど、答えを求めるしかないし、どこかにコミットし、地に足を着けて生きる方法を探ることも大事。だけど、どうする?そんなことで頭がぐるぐるする。というより、チューニングできてないラジオのように、ついつい感じてしまうんです(笑)」  20代で強烈なインパクトを映画界に残し、今なお創作活動を続ける石井監督だが、多くのSPA!読者と同じ30代・40代をどう過ごしてきたのか。 「常に必死だったし、『30歳すぎたらもう余生』『パンクは30歳で終わり』と思って、燃え尽きる覚悟で走り抜けました。でも、30歳すぎても生きてたので、『かっこ悪いな、オレ』みたいな気持ちはありました。その影響でしばらくはロックとか聴けなくなったし、ぼーっとしていたときもありました」

石井岳龍監督が普段聴く音楽は…意外すぎる答えが

 では、そんな監督がオススメする、パンク“以外”の音楽とは? 「ベンチャーズがいいですね。昔はちょっと馬鹿にしてたんだけど、今聴くと気持ちいい。やっぱ『パイプライン』でしょう(笑)。家では普段、女性ボーカルのジャズをよく聴いてます。エラ・フィッツジェラルドの若い頃の曲とか。ジャズのリズムに乗せて子守唄のような声を聴くと、余計なことを考えなくて済むんですよ。それからデューク・エリントンのソロ・ピアノ。リズムがすごいけど心に沁みる。『パンク侍~』を観て疲れたらこういう音楽を聴いてもらい、心が落ち着いたらまた映画を観てもらいたいですね」  意外!石井監督がベンチャーズとは!しかし、それもまた次なる“爆発”への助走なのかもしれない。 「人間そんなに変われないので、また何か沸々と、じっとしていたらエネルギーが沸いてきた。40代になったら、『まだ自分には足りないものがある』『もっと大事なことを知らないといけない』という思いが強くなっていった。あとどれだけ撮れるかわかりませんが、それを確かめるために『これだ!』っていうモノを懸命につくっていく、その繰り返しですね。一度、大きく爆発したけど、飛び散った破片を拾い集めながら、じわじわ復活してきた感じです」  やはりそう来なくては。この狂った世の中には、まだまだ監督の爆発が必要だ。 【石井岳龍】 ’57年、福岡県生まれ。日本大学芸術学部に入学後、『高校大パニック』(’78年)を監督。その後も次々と衝撃作を発表し、インディーズ界の旗手として名を馳せる。現在は監督業のほか、神戸芸術工科大学で教鞭を執る <取材・文/中村裕一 撮影/水野嘉之>
株式会社ラーニャ代表取締役。ドラマや映画の執筆を行うライター。Twitter⇒@Yuichitter
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『パンク侍、斬られて候』6月30日(土)より爆夏ロードショー!
監督:石井岳龍
脚本:宮藤官九郎
出演:綾野剛 北川景子 東出昌大 染谷将太/浅野忠信/永瀬正敏/國村隼 豊川悦司ほか
配給/東映 ©エイベックス通信放送

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