「やられた。財布が、ない!」――世界23か国、2年と8か月も続けた「世界一周花嫁探しの旅」をやめる理由〈第43話〉
【13か国目イスラエル】
その後、コーダホテルで出会った旅仲間4人でヨルダンとイスラエルの国境にあるフセイン橋からイスラエルへと入国しました。しかし、仲間の一人がスーダン・ソマリアへ入国した経歴があるため国境の検問に引っかかり、10時間近く尋問と拘束をされてしまいした。やはりイスラエルは戦時中の国です。エルサレムの街には銃を持った兵士がごろごろと溢れていました。 エルサレムの旧市街近くのアラブ人エリアの安宿に2週間ほど滞在し、キリストが亡くなった聖地・ゴルゴダの丘、イスラム教の聖地岩のドーム、ユダヤ教の聖地・嘆きの壁を毎日訪れました。
元々は同じ宗教だったという説がある3つの宗教。その3つの宗教の信者をボーと眺めることで、比較文化的な見地からそれらの宗教を理解しようと試みました。イメージ的にはキリスト教がスネ夫、イスラム教がジャイアン、ユダヤ教がのび太って感じです。スネ夫がイメージのキリスト教徒は着ている洋服がお洒落で洗練されています。寄付が多いのか教会など建物も立派です。商売も上手。そして信者のマナーがいい。ジャイアンがイメージのイスラム教徒は少し厳格で粗野なところもありますが、本当は優しくて牧歌的。のび太がイメージのユダヤ教徒はヒョロヒョロとしてる人が多い。だけど実は芯が強いように感じました。同人誌のドラえもん最終回ではのび太が大人になってドラえもんの発明者になります。もし、ドラえもんを発明するならユダヤ人かなっていうイメージです。あくまでもこの比喩はエルサレムで毎日3つの聖地を周り、訪れる人を見ながら頭でパッと浮かんだイメージです。スネ夫、ジャイアン、のび太は、もしかして西洋人、アラブ人、ユダヤ人を例えたのかもしれません。もしこの表現で気分を害された方がいらっしゃったら大変申し訳ございません。これからも勉強を続ける所存でございます。
エルサレムの後、マリア様がキリストの受胎告知を受けた教会、キリストが生まれた場所、キリストが初めて洗礼をした川、水面を歩いた湖、悪魔の囁きに取り憑かれた岩山など、キリストが生まれてから死ぬまでの軌跡を旅しました。その旅の途中でパレスチナの難民キャンプにもお邪魔しました。パレスチナとユダヤ人との町を隔てる高い分離壁には、イスラエル軍に殺された沢山の子供たちの名前が刻まれていました(パレスチナ人談)。
その壁一面にたくさんのストリートアートが描かれていて、そのほとんどが戦争反対や平和を求めるものでした。世界中の政治的な場所にゲリラで絵を描くイギリスの覆面アーティスト、バンクシーの絵も発見しました。どの絵からも魂の叫びを感じました。
【14か国目 トルコ】
イスラエルから一度ヨルダンに戻り、ヨルダンのアンマン空港から空路でトルコの首都イスタンブールに入りました。イスタンブールではブルーモスクの近くや、タクシン広場など宿を転々としながらトルコ料理を楽しむ旅をしました。
中東のケバブやフムス(豆を挽いたソース)に飽き飽きしていた俺にとって、トルコ料理は衝撃でした。ロカンタレストランと呼ばれる大衆食堂では大皿に盛られた料理を選ぶことができます。しかも、一品300円程度でトルコパンが食べ放題なのでバックパッカーの懐にとても優しい。しかもどれもこれもうまい! トルコ料理は中東やアフリカだけでなく、アジアや西洋の影響を受けているため、日本人の舌に合うような気がしました。しかし、一番おいしかったのは中国国境近辺で紛争中のウイグル自治区から逃れてきたウイグル人の作るウイグル麺でした。麺が日本のうどんとほぼ同じでとてもおいしかった。やはり体は日本食を求めているようです。
その後、トルコを半周しました。とてもエンジョイしましたが、テロの影響で観光客が全くいなかったりと、観光面では大打撃なようです。昔は日本人観光客が多かったので日本語を話せるトルコ人も多かったようですが、今は中国語、韓国語にシフトチェンジしてしまったと言います。
カッパドキアの滞在中、ホテル予約サイト「ブッキングドットコム」が政府のお達しで突如使えなくなりましました(不確定な情報ですが、オランダ・アムステルダムに本社を置くブッキングドットコムがトルコ政府に税金を払わないので、トルコ側が使用を禁止したという話を聞きました)。テロの影響で観光客がいないため、いい宿に安く泊まれたりもしましたが、普段は優しくて陽気な宿のオーナーがたまに見せる悲しげな表情が今も忘れられません。
イスタンブールに戻り、ガラタ塔近くのタクシン広場にしばらく宿をとって過ごしていると、多くの場所でデモが起きていました。すると、宿のオーナーから「大統領選挙当日にタクシン広場でテロが起きる可能性があるかも」との情報が入りました。急いでバックパックに荷物を詰め、隣国ギリシャにバスで移動することにしました。
1969年大分県生まれ。明治大学卒業後、IVSテレビ制作(株)のADとして日本テレビ「天才たけしの元気が出るテレビ!」の制作に参加。続いて「ザ!鉄腕!DASH!!」(日本テレビ)の立ち上げメンバーとなり、その後フリーのディレクターとして「ザ!世界仰天ニュース」(日本テレビ)「トリビアの泉」(フジテレビ)をチーフディレクターとして制作。2008年に映像制作会社「株式会社イマジネーション」を創設し、「マツケンサンバⅡ」のブレーン、「学べる!ニュースショー!」(テレビ朝日)「政治家と話そう」(Google)など数々の作品を手掛ける。離婚をきっかけにディレクターを休業し、世界一周に挑戦。その様子を「日刊SPA!」にて連載し人気を博した。現在は、映像制作だけでなく、YouTuber、ラジオ出演など、出演者としても多岐に渡り活動中。Youtubuチャンネル「Enjoy on the Earth 〜地球の遊び方〜」運営中
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