更新日:2018年07月20日 14:05
スポーツ

元巨人・桑田氏が物申す。日大アメフト問題に限らない“若者をダメにするスポーツ指導者”の現実

ミスを怒ったって何も解決しない

<テレビ番組などで桑田さんは自分の子どもを「怒らない」ことが話題になっている。怒って解決するのなら怒るが、怒っても何も解決しない。「なぜ駄目だったのか」、「どうすべきだったのか」を伝えてあげるのが本来の指導だという。できないということは、方法を知らないだけで、やり方を知ればできる。知れば簡単であって「知ることを教えてあげる」ことが、指導だという。> 桑田:僕だって「何やってんだ!」と言ってしまうことはあるし、不甲斐ないプレーに腹が立つ時もありますよ。でも、コーチが怒っても選手が萎縮したり、コーチの考えを忖度するだけで、選手が自分で考える力を養うという育成の観点では何も解決しないんですよ。 <桑田さんは2009年4月に早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程へ入学。2010年1月には論文「アマチュア野球の抱える課題に関する研究-現役プロ野球選手に対するアンケートをもとに-」で濱野吉生学術賞を受賞している。> 桑田さん著書2桑田:僕は早稲田大学大学院で、日本の野球界の歴史ついて研究しました。文献調査でわかったのは、早稲田の飛田穂洲先生(*注)のように、現代のスポーツマンシップに通じる指導を実践する先人がいたことです。  厳しい練習といっても練習時間は一日3時間程度選手には授業に出ることを奨励し、合宿所では先輩は後輩を思いやり、後輩は先輩を敬う家族愛が大切だと説いていたのです。  こうした教えを実践している人が昔からいたわけですから、僕は「どうして今の野球界は当時とかけ離れた指導をしているのか」と疑問を抱きました。 (注)飛田穂洲(とびた・すいしゅう):野球評論家。1913年早稲田大学卒業。野球評論家。「学生野球の父」と呼ばれた。没1965.1.26.

プレイヤーズ・ファースト

<日本の少年野球団体の多くは選手育成の理念を掲げ、その価値観を実践する規則を設けるリーグも登場している。今回の講習を開いたグローバルベースボールリーグも同じ考え方だという。桑田さんが目指すのは、こうした動きを加速させることだ。> 桑田:やはりアマチュア野球では「プレイヤーズ・ファースト」という考え方が大切だと思います。誰だって勝つことは楽しいし、今の時代はチームが勝つと選手の進路が広がることも重々承知しています。  でも僕は、プロ野球の世界でせっかく素質があるにも関わらず、アマチュア時代の故障が尾を引いて、プロで成績を残せず早々と引退する選手を数多く見てきました。成長期である10代に致命的な故障をしてしまうと、野球選手としてパフォーマンスがピークを迎える20代半ばに活躍することができなくなってしまいます。  僕は、無限の可能性を秘めた金の卵をアマチュア野球界全体で大切に育てて、次のステージに送り出すような環境を整備したいんです。 ――桑田真澄が考える、スポーツ指導の未来(第1回)―― <取材・文/ジャーナリスト・草薙厚子>
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