発達障害者が教えてくれた「仕事ができないコンプレックス」との向き合い方
NHKで特集が組まれたり著名人がカミングアウトしたりするなど、昨年からある意味“社会現象”になっている「大人の発達障害」。これまでは子供の障害だと思われていたものが、実は気づかないまま大人になっている人が多くいるという事実が認知され、「自分もそうかも」と疑って病院で受診する人が増えている。
「成人になってから病院を受診する人は、やはり仕事関係で悩んだすえに『こんなにもミスばかりなのは、発達障害だからなのでは?』と気づくパターンが多いです。発達障害の特性があるがゆえにケアレスミスが多かったり、マルチタスクが苦手だったり、職場の人とうまくコミュニケーションがとれなくて転職を繰り返したり……。そういったストレスから、“二次障害”で、うつ病や睡眠障害を引き起こして働くのすら難しくなった人もいました」
そう話すのは、これまで東洋経済オンラインでの連載などを通じて、多くの発達障害当事者を取材してきたフリーライターの姫野桂氏だ。近著『発達障害グレーゾーン』では軽度の発達障害の症状を持ちながら正式には認められず、会社内では症状を隠しながら働く(=クローズ就労)人たちに迫っている。取材活動を通じて、発達障害の傾向を持つ人たちが日々仕事で悩んでいる様子が浮かび上がってきたという。
「自分の特性に合わない業務をしていることでミスが増え、それによってさらにストレスを抱えてしまう。男性の場合、特にそういった失敗体験が自分へのコンプレックスに繋がってしまっている印象を受けました。男性社会では『男は仕事ができてナンボ』という価値観がまだまだ強いですよね。そんななか、発達障害の傾向がある人たちは、どんどん追い詰められてしまう」
姫野氏によれば、発達障害を抱える人が社会に出てから悩む場合、大きく2つのパターンがあるという。一つは新卒入社後、グループワークなどの研修についていけないというケース。もう一つはそれなりにキャリアを積んだものの管理職になってマネジメント業務が発生した際、部下への指示も自分も仕事も回らなくなってしまうパターンだ。
「そういった人たちがネットのチェックリストなどを試してみたら驚くほど当てはまり、自分を疑って病院などに殺到しています。今ではあまりに問い合わせが多いので“抽選式”にした病院もあるそうで……。取材したある20代男性の当事者は、こう話していました。『男なら、子供の頃は勉強スポーツができる、大人になったら仕事ができれば、もうそれだけで世の中的に価値がある感じがする。僕は仕事ができないから恋愛にも自信が持てない。だから結婚なんてできない』と。男性の場合、仕事の悩みはプライベートの悩みにも直結するんだな、と強く感じました」
しかし一方で、仕事のミスが多いことを受け入れ、工夫をこらしてコンプレックスを乗り越えている当事者もいたという。
「いろいろ失敗した経験から『基本的には自分を信用しない』と、ミスをすることを前提にして、他人やツールに頼る人も少なくないです。例えば、書類でのケアレスミスを防ぐために『自分は絶対にミスをする。だから自分の目を信用せずに他人に目を通してもらおう』と、絶対に上司や同僚にダブルチェックをしてもらう人。ほかにも『注意欠陥障害のせいで、パソコンのどこに何のデータが保存してあるのかわからなくなる』という悩みを持った人がいて、その人は検索ツールに詳しくなることで、むしろ“普通の人”よりも探し物が得意になったと。考え方次第で、不得手は得意なことにもなるんですよね」
姫野氏の新刊『発達障害グレーゾーン』には、そんな発達障害を抱える人だからこそ編み出せた「生活のテクニック」も多数紹介している。ただ発達障害を巡る状況を紹介するだけではなく、何か解決策を伝えたいという気持ちの表れだ。誰でもミスはするし何かしらコンプレックスは抱えている。それとどう向き合うのかは、発達障害者に限らず大切なマインドだろう。
<取材・文/日刊SPA!取材班>


■姫野桂氏の新刊発売記念イベントが開催!
12月20日に姫野氏の新著『発達障害グレーゾーン』の発売記念イベントが開催される。特別協力として関わった「OMgray事務局」のオム氏、株式会社LITELICOの鈴木悠平氏を招き、3人が「発達障害っぽさを抱えて生きる方法」についてトークする。
【日時】12月20日(木)19時開演(18時45分開場)
【場所】神保町「書泉グランデ」7Fイベントスペース
【参加方法】姫野桂 著「発達障害グレーゾーン」(820円・税別)を1Fでご購入いただいた方に、参加券を配布(定員50名)
【予約】電話(03-3295-0011)・メール(grande@shosen.co.jp)で予約可能
*詳しくは書泉グランデHPで(https://www.shosen.co.jp/event/89535/)
12月20日に姫野氏の新著『発達障害グレーゾーン』の発売記念イベントが開催される。特別協力として関わった「OMgray事務局」のオム氏、株式会社LITELICOの鈴木悠平氏を招き、3人が「発達障害っぽさを抱えて生きる方法」についてトークする。

【場所】神保町「書泉グランデ」7Fイベントスペース
【参加方法】姫野桂 著「発達障害グレーゾーン」(820円・税別)を1Fでご購入いただいた方に、参加券を配布(定員50名)
【予約】電話(03-3295-0011)・メール(grande@shosen.co.jp)で予約可能
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