路上ナンパ男と交際してしまう女性の胸中…27歳OLの場合
週に2、3日は会っていた。いつもタカシがカナの部屋にやってきて、カナの作った夕食を食べてから交わる。冗談を言っては笑い転げ、DVDを観たりマンガを読んだりして過ごす。
カナはなんとかタカシの中に居場所を見つけようとした。タカシの好きな映画を観て、音楽を聴き、喜ぶ料理を作った。
違和感はすぐに募ってきた。外で会おうとしないこと。部屋に連れていってくれないこと。会うと体を重ねる以外何もしないこと。
1か月ほど経った頃。タカシがシャワーを浴びている間に、カナはタカシの財布から免許証を抜き取ってスマホで撮影した。思い余っての行動で、手が震えた。タカシが帰った後に、グーグルマップのストリートビューで免許証に書かれた住所を調べてみると、こぢんまりとしたマンションだ。会社の寮と聞いて思い描いていたものとは異なる外観に、カナは戸惑い、不安にかられた。
タカシの言動のひとつひとつが疑わしく思えてくる。せめて外からでもいいからタカシの住む部屋を見たい。そうしなければ、2人の間にいつの間にかできてしまった壁は壊れない気がした。
会社の寮は部外者立ち入り禁止で、すぐ隣が寮長の部屋だから、女性を連れ込んだことがばれて退去させられた先輩がいる、等々。何度はぐらかされても頼み続けてようやく、マンションを外から見るだけなら、という約束をタカシから取りつけた。
最寄り駅に2人で降りて、15分ほど歩くとそのマンションは見えてきた。5階建ての小さくはないマンションで、廊下から各部屋のドアが丸見えになっている。誰でもどこからでも入っていける造りの、どう見ても寮とは程遠い建物だ。
部分的に会社が借り上げて寮にしているので、一般の入居者も一緒に入っている、それでも寮長が隣の部屋にいて目を光らせているというタカシの説明も、耳を素通りしていくだけ。
帰り道は、行きとは違う道を辿った。近道だからといいながら、タカシは住宅街の薄暗い通りを何度も曲がり、30分以上かけて駅まで戻った。
日に日に疑いと不安は増し、タカシの口から聞く言葉の全てが信じられなくなっていく。待ち合わせをしても来ないような気がした。会っていない日にどこで何をしていたと聞いても、嘘にしか思えない。
3か月めに、カナは別れ話を持ちだした。
タカシは執拗に引き留めてきた。だが顔を合わせても、カナは些細なことをきつい口調で問い詰めてしまったり、責めてしまったり。やがてタカシは別れを受け容れた。
徐々に募るタカシへの違和感
タカシのマンションに行ってみて

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