外国人アルバイトに教えられたこと――「お金0.0」〈第30回〉
店員「アノー…」
達也「…はい…、あれ…?みんなは…?」
店員「ミンナカエリマシタ。オカネハラッテ、オミセモウスグへイテンデス」
達也「あ…はい、すいません。あの、いま何時ですか?」
店員「4時デスネ。4時、5分マエ」
達也「4時…すいません。長い時間」
店員「おみず、ノム?」
達也「あ、はい。ありがとうございます」
トトトトトトト
店員「ドゾ」
達也「いただきます。店員さん、どこの国から来たんですか?」
店員「ミャンマーデス」
達也「ミャンマー、行ったことないですが、すごいですね。他の国に来てこんな遅くまで僕みたいな酔っぱらいの相手するなんて、ほんとすごいとおもいます」
店員「アリガトゴザイマス。デモスゴクナイデス」
達也「いや、すごいよ。なかなかできることじゃない。すごい」
店長「スゴクナイデス。オキュウリョウモラッテシゴトシテルダケ。ニホンジン、ガマンシテルヒトスゴイッテイウケド、ボクシゴトダカラ。イヤナラヤメルデス」
達也「そうなの!?でもさ、イヤでもガマンして、頑張った先に何かを見つけて、そこから学びがあって将来なんかの役に立つっていうふうに考えたりはしない?」
店員「シナイ」
達也「えー」
店員「ダッテ、ボクガココでシテイルシゴトはエート、ニホンゴムツカシイ。ナンテイウカ…」
達也「なに…?」
店員「タ行?」
達也「たぎょう?」
店員「チガッタ。サギョウ」
達也「似てるけどぜんぜん違うね」
店員「ウン。ダカラ、サギョウダカラ、タッキュウノレンシュウミタイナモノ。ボールくる、ウツ、ボールくる、ウツ、ボールくる、ウツ、ボールくる、ウツ、オカネモラエル。コレダケ」
達也「でもさ、それだけ基本の練習してたら、毎日の中からなんか学びがありそうじゃない。常連さんとの会話とかさ、効率的にまとめてボールを打つ方法とかさ」
店員「アノネ。コウカンガエルトワカルカモ」
達也「なに?」
店員「オカネモラエナクテモ、ズットヤリツヅケタイコト。ソレガシゴトダトオモッテル」
達也「ずっと…やり続けたいこと…?」
店員「ウン。ソレヲミツケルタメ二、イマハ、ボールウチカエシテルダカラ。オカネケッコウモラエルシ。マカナイオイシイシ。ヨッパライネルシ。ダカラガマンスルコトゼンゼンエラクナイシ、サギョウダカラ、ゼンゼンキタイモシテナイヨ」
達也「ぼ、ぼくは…いまとても感動しています。ありがとう。なんかすごく、教わりました。僕はいま、ちょっとしたトラブルからいろんな仕事を経験して、その経験を通じて将来立派な大人になるために毎日ガマンしてる(させられてる)んだけど、なんか、そうだよね。無理してなんかを期待しながらやりたくないことずっとやってても意味ないよね。それならもっと、ちゃんと給料稼いで、将来の自分のためにしっかりとしたビジョンで、店員さんが言うようにお金もらわなくてもずっとやってられることを見つけることのほうが…」
店員「アト、モヒトツ」
達也「うん」
店員「ソロソロヘイテンデス」
次号へつづく(いでの・たつや) 1994年、兵庫県生まれ。元かけだし俳優、高校卒業と同時に上京。文学座附属演劇研究所卒業後、エキストラ出演やアルバイト勤務を華麗にこなし、たまたま仮想通貨で得た大金を秒速で盗まれる。Twitterアカウント(@tatsuya_ideno)
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