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pato「おっさんは二度死ぬ」――豪快で、爽快な大どんでん返しを味わってみてほしい<書評・吉村智樹>

なぜおっさんが二度死ぬのか。その真意を知り僕は解放された

 「おっさん」「キモい」「死ね」  その通り、おっさんは「キモい」。僕は現在53歳。逃げも隠れもできない、正真正銘、竹を割ったようにスパッと見事におっさんだ。そして当然のことながら、僕はキモい。  特に容姿の醜さは、おっさんになる以前から無敵だった。デブで、チビで、ブサイク(のちにハゲ)。それゆえ、クラスの女子たちから忌み嫌われ続けた。  中学時代のこと。学校の下足箱に「先輩のことが好きです。放課後、校舎の裏へ来てください」と書かれた紙が入っていた。まさかと思いつつ淡い期待を込めて行ってみると、そこには「よしむら」と書かれた紙とともに包丁を突き立てられた鶏の死骸が置かれていた。遠くで嗤いながら走り去るクラスの女子たちの背中を目で追いながら、僕は「一度目の死」を味わった。  現在も、あの日のトラウマから抜け出すことができない。「自分は存在するだけで、女性にとって迷惑なのだ」と、仕事以外で女性や女子には、できうる限り会わないように気をつけている。  ……と、こんなふうに「自分はキモくないですよアピール」に顔真っ赤なところが輪をかけてキモい。自分でも、さっさとくさいヘソでも噛んで死ねばいいのにと本気で思う。  僕のような見た目のファイナリストではなく、自分はそこそこラインをクリアしていると勘違いしているおっさんも世の中には多いだろう。だが、違う。違うのだ。おっさんは、おっさんであるという事実だけで、もうキモいのだ。

大どんでん返しの快感は、僕のトラウマすらも消し去った

 ある女性ライターに、サラリーマン向け週刊誌の仕事を振ろうとしたことがある。彼女は「ええ~。その雑誌って、おやじが読むタイプのやつですか? うわぁ、いやだ。キモぉい~」と、なんら言葉にやさしさ加工を施すことなく、彼女は真正面から言い放った。たとえ大手版元の名だたる雑誌であろうと読者がおっさんなら、彼女にとってそれはうんこでしかない。おっさんは、週刊誌を読んでいるだけで「死ね」呼ばわりされる級にキモいのである。  では「二度死ぬ」とは? 一度死んでいるっていうのに、おっさんは、まだ死ななきゃならないの? 二度死に値するほど加齢臭がキツいの?  そうではない。この本では、おっさんたちが迎えるべき“二度目の死”について、その意味が解き明かされる。それを読み、二度目の死の真意を知り、僕は解放された。中学時代のトラウマから、やっと抜け出せそうな気がした。  豪快で、爽快な、大どんでん返しの快感を、ぜひ味わってみてほしい。読み終えた頃に、登場人物の全員を、そして醜い自分を、抱きしめたくなるほど好きになっているに違いない。  さあ、怖がらず、あなたも「二度目の死」を体験してみよう。   【吉村智樹】 ライター、放送作家。雑誌連載やテレビ番組の構成をはじめ、いまトピ、DANRO、SUUMOタウン、CREA_WEB、メシ通、まぐまぐニュースなど様々な媒体で活動。公式HP ツイッター @tomokiy
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pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――

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