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発達障害の人を救う、誠実で実践的な体験談/鴻上尚史

発達障害

※写真はイメージです

発達障害の人を救う、誠実で実践的な一冊

『ほがらか人生相談』という連載を始めて、それがネットに転載されて注目を集め、毎月、150人ぐらいからいろんな相談が送られてきます。  その中で、「私は発達障害です」という相談が、一定数、あります。  もちろん、僕は専門家ではないので、医学的に何かを言えるわけではありません。  なのに、僕に「自分は発達障害である」と思っている人が大勢、相談のメールを送ってくるということは、それぞれの人がかなり追い込まれて、苦しんでいるのだろうなあと思います。  最近読んだ『発達障害グレーゾーン』(姫野桂/扶桑社新書)は、今まで、僕が読んできた「発達障害」に関する本の中で、じつに実践的で誠実な本でした。  本書によれば、発達障害は「生まれつきの脳の特性で、できることとできないことの能力に差が生じ、日常生活や仕事に困難をきたす障害」です。  大きく分けると「注意欠如・多動性障害(ADHD)」、「自閉スペクトラム症(ASD)」、「学習障害(LD)」の3つの種類があります。  それぞれの主な症状は、「ADHD|不注意が多かったり、多動・衝動性が強い」「ASD|コミュニケーション方法が独特だったり、特定分野へのこだわりが強い」「LD|知的発達に遅れがないにもかかわらず、読み書きや計算が困難」です。  ただし「この3つのうち『これだけが当てはまる』という人はほとんどおらず、実際には障害の程度や出方は人それぞれであり、ADHDとASDを併存、または全種類を併せ持っている場合もある。だからこそ、発達障害は『グラデーション状』だといわれている」のです。  筆者は、こう書きます。 「私も(発達障害の)当事者の一人として、もし、これを読んでいる人のなかに発達障害の方がいたとしても、『発達障害だからといって極度に落ち込む必要はない』と言いたい。発達障害は能力の偏りがあるという事実のみで、それ以上でもそれ以下でもないと、個人的には思っているからだ」  発達障害に苦しんでいる人は、勇気づけられる言葉だと思います。
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生き抜くためのノウハウがある
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