「空気」を読んでも従わないとラクになる。中・高校生に伝えたい思い/鴻上尚史
中・高校生に伝えたい「世間」と「空気」
10年前に講談社現代新書から出した『「空気」と「世間」』の内容を中・高校生向けに書いたものです。
おかげさまで、『「空気」と「世間」』は、それなりに売れているのですが、一番伝えたい世代には届いてないなあ、どうしたらいいだろうなあと考えて、岩波ジュニア新書さんからの出版をお願いしたのです。
出版記念の講演会とサイン会を池袋の三省堂本店さんで開かせてもらいました。中・高校生が来てくれてるかなあと思ったら、みんな、中年の男性と女性でした。
いえ、来てくれてとてもありがたいんですが、中・高校生に届くかなあと一瞬、不安になりました。
本では、冒頭、大学のゴルフ部に入ったドイツ人女性が、「まるで奴隷のように働く1・2年生と、王様のようにそれを受ける3・4年生」の風景に驚いた、という話から始めました。
ドイツ人女性は、3年生として入部したので、いきなり、王様扱いになって、ボールを用意したり、部室を掃除することから解放されます。
あまりに理解できないので、「どうして、あなた方はそんなことをしているのですか?」と1・2年生に問えば、「後輩ですから」と答え、「どうして、3・4年生の荷物を持つのですか?」と聞けば「先輩ですから」という答えに驚愕します。
中学生なら、まだ、この答えを受け入れたかもしれません。
が、20歳にもなろうとする大人が「後輩ですから」「先輩ですから」という言葉で、「奴隷」と「王様」に分かれるシステムが、ドイツ人女性にはどうしても理解できなかったのです。
僕の著書を読んでくれている読者なら分かると思いますが、ここから日本社会における「世間」と「社会」、そして、「空気」の話が展開されるのですが、理不尽な先輩に苦しめられ、激しく傷ついているのは、日本中の中・高校生じゃないかと僕は思っています。
もちろん、社会人の中にも、会社の理不尽な先輩に苦しめられている人は多いでしょうが、中・高校生のナイーブさというか傷つきやすさを、はやく、なんとかしてあげたいと勝手に僕は思っているのです。
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