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「大麻は悪くない」と主張してきた男が、逮捕されて全てを失うまで

逮捕されてから数年、今思うこと

逮捕

日本では違法の大麻。見つかれば逮捕されてしまう(画像はイメージです)

「仕事仲間から、ブランドものの“いい大麻”をもらって、自宅に帰宅する途中で、運悪く職務質問に引っかかってしまった。ポケットに巻きタバコ用の紙を入れていたことがきっかけで、バックの中身、財布の中まで見られて。小銭入れに入れていた大麻が見つかり、現行犯で逮捕されました」  警察の取り調べは思っていたよりも壮絶なもので、誰から入手したものなのか、いつから、どれくらいの頻度で使用しているのかなど相当激しく詰め上げられた。事情聴取は、妻や実家の家族、そして取引先にまで及んだ。「大麻は麻薬じゃない」などとは、とても言える状況ではなかったという。  鈴木さんはここであることに気がついた。 「大麻は悪くない、と私が主張したところで違法は違法。そのために、家族やみんなに迷惑をかけた。それだけじゃない、取引のあった仕事先からは全ての契約を切られたし、大麻仲間だったクリエイティブ系の人たちも僕を避けるようになりました。どれだけ仕事ができようと、いい人であろうと、結局、違法な大麻を吸っている、ということはそれだけで信用を無くす、ということです」  月に百数十万あった売り上げは十万円台まで落ち込み、大麻仲間からも見放されると、酒に溺れるようになり、当時は繁華街の雑貨店などで購入できた「危険ドラッグ」にまで手を出した。危険ドラッグの吸いすぎで体はやせ細り、最後は肝機能障害で倒れてしまい、病院に担ぎ込まれたのだった。  そのとき、傍に妻や子どもの姿はなかった――。 男性「酒に溺れるようになって、妻は子どもを連れて実家に帰りました。しばらくして妻の判が押された離婚届が送られてきました。それからはもう自暴自棄です。大麻は素晴らしい、と言っていた仲間からも裏切られ、すべてを失ったのです」  現在は、再びフリーランスのデザイナーとして活動を再開し、わずかではあるが、別れた妻に養育費を送金できるようにまでなった。鈴木さんが訴える。 「大麻の合法化を訴えるのはいい。ただ、合法化を認めろと言いながら、日本国内では違法な大麻所持、売買を行なっていてはどうしようもない。家族や仲間に対して無責任な奴、というレッテルが貼られるだけでなく、やはり大麻の合法化は避けるべきという世論になってしまう。法律を変えようとしている人が法を守っていなければ、当たり前ですが信用されない。意見は色々あっていいが、まずは法を守るべき。私のようにすべてを失う前に気がついて欲しい」<取材・文/伊原忠夫>
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