カーライフ

最近の軽自動車でカーマニア清水草一が一番いいと思う1台は?

 中高年カーマニアは、マニアックな輸入車やスポーツカーにしか興味がないと思ったら間違いで、軽自動車にだって興味は大アリだ。実際私はこれまで、ダイハツエッセECOとS660という、2台の軽自動車を所有したことがある。どっちもMT車だったが。

かつての愛車ダイハツエッセECO(愛称・みかんちゃん)

東京―鹿児島間を往復したS660(愛称・飛雄馬)

最近「これはスゴイ!」と唸らされた軽は……

 現行モデルで所有欲をそそられる軽は、なんと言ってもジムニーだが、あまりにも本格派のクロカン4WDで、オフロード趣味が皆無の自分には無意味すぎる。  個人的には、「ふだんのゲタにハスラーもいいな」と思ったりしたが、乗り味がいまひとつ平凡だった。一般のみなさんは「ハスラーが平凡なのは当たり前じゃ?」と思われるだろうが、軽自動車の世界も日進月歩。カーマニアを唸らせる新型車は決して少なくない。  最近、「これはスゴイ!」と唸らされた軽は、ダイハツのタントだった。

ダイハツタント

 何がすごいって、シャーシがすごい。シャーシってのはクルマの土台になる骨格のこと。この剛性がものすごく高く、あんなに頭でっかちなのに重心が低くて操縦性抜群。スポーツカーのように走ってくれたのである。一般ユーザーにすれば、タントでコーナー攻めるなんて「バカですか?」でしょうが、カーマニアはそういう潜在性能にこだわるのである。  タントは「DNGA」という、新しいシャーシを導入した。これは、トヨタの「TNGA」みたいなもので、従来の80点主義から脱皮し、100点のクルマを目指したものだ。ドイツ的完璧主義と申しましょうか。トヨタグループの一員であるダイハツも、大トヨタに倣って100点主義に転換し、DNGAを開発したわけです。  が、いくらなんでもタントは欲しくない。タントが採用した100点の土台を使ったほかのモデルが早く出ないかと期待していた。  それが出たんですよ! タフトです!

タントじゃないよ!タフトだよ!

 コンセプトは、スズキ・ハスラーのまんま対抗馬。ダイハツ版ハスラーですね。ただハスラーと違うのは、見た目がぐっと軍用車っぽいこと。「ギアっぽい」ってヤツですか? 子供のころ大好きだったダイヤブロックを思い出す(レゴは高くて買ってもらえなかった)。とにかく男の子のオモチャっぽくて、58歳のボーイズスピリットに火が付くぜ。  そのタフトにいち早く試乗するために、近所のディーラーに出かけてみた。対応してくれたのは、少し頭が薄くなった、親切そうなセールスマン。試乗車はFFのGターボで、車両価格160万円である。

キャッチコピーは「ジブン、オープン。青空SUV」

 実物を目にして「やっぱりこれはイイ!」とシビレた。新型ハスラーはかなりファミリーカーっぽくなったけど、タフトは逆にミリタリーっぽくて、かつての「ネイキッド」をほうふつとさせる。ひょっとして奥様には「戦争はイヤ!」って言われるかもしれないが、そういうところもカーマニア好みだ。

どうですか! このルックス!

 近所の試乗コースへ乗り出して、改めてボディのしっかり感に感動した。さすがDNGA! 横に乗ってるセールスマンに「ドイツ車みたいですね!」とほめると、「ありがとうございます。こちらはターボですので、加速も思い通りです。高速道路でも追越車線をバンバン走れます」と、立て板に水で喋りまくりである。  タントに比べると70kgくらい車重が軽いせいか、3000回転あたりからのターボのトルクの盛り上がりで、唐突に加速しすぎるくらい速い。速すぎるぜ!タフト!

ターボモデルは速すぎるぜ!タフト!

次のページ
もちろん室内も広い
1
2
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中

記事一覧へ
おすすめ記事