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飲食店の無断キャンセル客、被害額2000億円。弁護士が料金回収する方法とは

飲食業界にとって、最大の敵ともいわれる無断キャンセル。被害額は年間2000億円ともいわれる巨大な敵に立ち向かう秘策とは…… 飲食店

ドタキャン客を撲滅する方法

 全国各地の飲食店が賑わう週末、ほろ酔いの人々の笑顔とは対照的な悲鳴が、SNS上を駆け抜ける。 「助けてください…本日18時半からの団体29名様が連絡ないままキャンセルとなってしまいました…もうコース料理も全部ご用意している状態でこのままだと…お料理のみコース、2000円で飲み放題付き3000円でお立ち寄りいただける方いらっしゃいませんでしょうか…」  ドタキャン被害に遭った店主の叫びは、もはや日常の光景と言っていい。  だが、そんな彼らもやられっぱなしではない。「無断キャンセル対策推進協議会」が設立され、本腰を入れているのだ。同協議会の理事長であり、飲食店経営の支援サービスを運営する「トレタ」社長の中村仁氏に聞いた。 「まず、混同されがちですが、ドタキャンと無断キャンセルは、大違いです。ドタキャンは、たとえ1分前でも、『今日は行けない』という意思表示があるので、飲食店はその時点で予約席を他のお客に開放できます。一方で無断キャンセルの場合は、予約時間を過ぎても、来るかどうかわからないお客を待たなければなりません。お店の経営的にも現場スタッフの精神的にも、ダメージは甚大です」  近年、無断キャンセルは、No show(ノーショー)とも呼ばれる。「No showは社会悪だ」と断じる中村氏が委員を務める経産省No show対策の勉強会では、被害額を年間2000億円と試算しており、経産省も大きな経済損失を招く社会問題と認識している。長らく飲食店経営に携わった経験のある中村氏は、当時自分が厨房で味わった悔しさをバネに、その撲滅に挑んでいるという。

無断キャンセルのしわ寄せは一般客に

 ただ、中村氏の分析によれば、悪意のNo showは少なく、「うっかり」によるものが大半だという。すなわちNo showを減らすには、予約情報をしっかり確認してもらうことが重要になる。 「WEB予約が増えているとはいえ、今でも80%は電話予約です。電話だと時間や人数などの伝達ミスが起こりますし、キャンセル料の扱いなどについてお客に伝えづらいですよね。そこで、予約の日時と人数、キャンセル料について明示したショートメッセージをお客のスマホに送り、文面で確認してもらう『トレテル』というサービスを無料で提供しています」  こうした予約の入り口での対策に加えて、同社では不測の事態への備えにも抜かりがない。 「やむを得ない事情は誰にでもありますので、通常のキャンセルは仕方ありません。そこで万が一、急に空席ができたときの集客に使える新サービス『トレタ now』を始めました。お客の側も、『二次会行く? 誰か空いてる店知らない?』という状況はよくありますよね。その両者をつなげる、超直前予約サービスというわけです」  ここで大切なのは、No show撲滅は、われわれ消費者の利益にもなるという視点だろう。 「No showのしわ寄せは大多数の善意のお客にも及んでいます。料金の上乗せであったり、予約が取れなくなったり。No showがなくなれば、飲食店の収益は守られ、従業員の賃金が上がる。そしてお客もよりいいおもてなしを受けられるようになるでしょう」  2000億円が社会に還元されれば、増税後に冷え込む消費の下支えになるかもしれない。
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弁護士がキャンセル料金を回収
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