トヨタの「ヴィッツ改めヤリス」のワールドプレミア(世界初公開)が、10月15日、ニッポン(お台場メガウェブ)で行われた。これは大変珍しいことで、ニッポンの自動車メディア業界は、軽いお祭り騒ぎになった。
なんで、わざわざ日本で世界初披露?
ボンクラ諸君は、「国産車なんだからニッポンで初公開するのはアタリマエだべ?」と思うでしょうが、近年の日本市場の販売低迷と、自動車のグローバル化の進展によって、グローバルモデルのワールドプレミアは、ほとんど海外で行われるようになっていた。日本で初公開されるのは、軽自動車やミニバンなどの日本専用モデルだけというのが現実だ。
そんななか、ヤリスのワールドプレミアが地元・ニッポンで行われたのはなぜなのか。
実はヤリスのワールドプレミアは、ほぼ同時にオランダでも行われていた。これは、ヤリス(とヴィッツ)が、日本とヨーロッパだけで全体の9割も売れるという、特殊なモデルだからだろう。
世界中でクルマのサイズが肥大化し、ヤリスのような小型車は、徐々にマイナーな存在になりつつある。もともとアメリカでは小さすぎてあまり売れなかったが、かつて小型車が売れていた中国でも、経済成長に従って急激にクルマが大型化し、いまやこんな小さいクルマは売れない。新興国も同様の傾向にある。みんなデカいクルマに乗って見栄を張りたいんだよ!
日本じゃ軽自動車の天下だけど、そんなの日本だけ! 外国人観光客が日本に来ると、走ってるクルマがちっちゃいのばっかりでビビるというが、まさにガラパゴスだ(いい意味で)。
ということで、伝統的に小型車の需要が根強いヨーロッパと日本とに、ヤリス(とヴィッツ)の販売は片寄っていったのでした。
ヤリス(とヴィッツ)は、日本でも常に販売台数上位に来る量販車種だが、実は昨年の販売台数を見ると、日本は8万7000台。対するヨーロッパは21万9000台! ヨーロッパのほうが2倍以上多かった。車名がヴィッツから海外名のヤリスに統一されたのも、ヨーロッパ市場がメインのクルマだからってのはあるだろう。トヨタ様は、「新しい車名で新しいスタートを切るため」と言ってますが……。
で、実物のヤリスの第一印象はどうだったかと申しますと、正直なところ、「ちょっとヤリスギじゃ?」でした。
フロントおよびリヤウィンドウはガバッと寝かされ、サイドウィンドウも屋根に向かって大きく傾いていている。居住空間の上部がキュッと絞られた、非常にスポーティなフォルムだ。顔つきもバクッとエラが張っていて、かなり攻撃的。後ろ姿は、足元のタイヤがグワワと踏ん張っているイメージだ。全体としては「スープラのコンパクトカー版」とでも申しましょうか。
こういうフォルムだと、当然室内は狭く感じる。ヨーロッパでアピールするには悪くないが、真四角なクルマ全盛の日本でこれはキツイ。
トヨタ様によると、こういう形にしたのは、「日本には四角いクルマはたくさんあるので、ヤリスは独自の存在感で勝負したかった」「デザインイメージは黒豆」とのこと。しかしここまでスポーティだと、やっぱ日本じゃヤリスギってことになるでしょうね……。
このカタチを見れば、車名をヤリスに統一したのも自然に思える。ヴィッツのつもりで買いに来た日本のユーザーは、「えっ、こんなのヴィッツじゃないわ~!」と思いそうなので。レンタカーでたまたまヤリスが当たっても、「中が狭いから軽にしてくれ」って苦情が出るかも。