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“おっさんLINE”を要約したら、ピチカート・ファイブの名曲になる――patoの「おっさんは二度死ぬ」<第47話>

 昭和は過ぎ、平成も終わり、時代はもう令和。かつて権勢を誇った“おっさん”は、もういない。かといって、エアポートで自撮りを投稿したり、ちょっと気持ちを込めて長いLINEを送ったり、港区ではしゃぐことも許されない。おっさんであること自体が、逃れられない咎なのか。おっさんは一体、何回死ぬべきなのか――伝説のテキストサイト管理人patoが、その狂気の筆致と異端の文才で綴る連載、スタート! patoの「おっさんは二度死ぬ」【第47話】おっさんLINE  お前らはおっさんが傷つかないとでも思ってるんだろう。なに言っても傷つかないと思ってるんだろう。だからあんな酷いことが言えるんだ。  昨今の世の中の風当たりはとかくおっさんに厳しい。それは致し方がない部分もあるかもしれない、つまりおっさんが悪い部分も確かにある。けれども、それにしてあまりにも酷すぎやしないだろうか。 「おっさんはキモいんだから何を言ってもいい」  そう思っている部分がないだろうか。  確かにおっさんはキモい。それは異論のないところだ。僕自身がキモくないかと問われたら、まあ、キモい、周りのおっさんを見てもだいたいキモい。だからキモいという部分には同意せざるを得ない。けれども、何を言ってもいいにまで理論が飛躍するのはいささか問題だ。  では、なぜそんな状態になるのか。もしかして、その先には、「おっさんなら傷つかない」という想いが少なからずあるのではないだろうか。そう、何を言っても大丈夫だろうという心理が少なからず働いているのではないだろうか。  確かに無遠慮で鈍感なおっさんは多い。それでも、おっさんはおっさんでやっぱり傷つく。ほら、みろ、すっかりおっさんが委縮してしまっているじゃないか。  そう、目の前にいる馬場さんはやはり委縮していた。  この馬場さんは読者の方の記憶にも新しいと思うが、立川の場外馬券売り場に巣食うおっさんだ。ちょっと馬の血統に詳しい。  前回は風俗嬢に恋をしてしまい、その風俗嬢がお店のHPにアップするプレイ後のお客に向けた「お礼日記」を読みながら、他の客とのプレイを想像して嫉妬したり、勝ち誇ったりしていた男だ。  くわしくはこちらを参照されたい。(第34話 デリヘル嬢との恋路に、立ちはだかった戦国武将)  その馬場さんだが、待ちに待った自分へのお礼日記は、なぜか「真田幸村」と書かれているだけだった。こうして彼の戦いは終わったのだ。  その馬場さんだが、今度は別の風俗嬢を狙っているらしく、相談があるということでまた場外馬券場近くの喫茶店に連れてこられたのだ。 「今回は違うぞ! イケると思う」  馬場さんは開口一番そう言った。いつもながら何を根拠にしているのかちょっと疑問だ。 「LINEも交換したんだ!」  しかしながら、今回はきちんとした根拠があったようだ。LINEの交換。これで完全に一歩踏み込んだ関係になれたと思ったらしく、満面の笑みを見せた。気持ちが大きくなっているのか、馬場さんはいつもより大きいサイズのアイスコーヒーを頼んだ。  しかし、その表情はすぐに暗いものになった。 「ただ、お礼日記がよ……」  また風俗嬢のお礼日記かよ、それしかないのかアンタはと思いつつ、ちょっと話が飛躍していて訳が分からないので順序だてて話を聞いてみた。
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おっさんLINEと呼ばれるのはやはりツラい
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“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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