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ブランド品でも高級腕時計のように高級バッグを高く売るのが難しい理由

 腕時計もクルマも好きな斉藤由貴生です。私は、現代のおかしな消費を変えるために実践を重ねながら、いろいろ研究してきました。私は30代のいわゆるバブルを全く知らない世代です。所有欲の薄い世代とは言われますが、私の場合は、むしろ価値あるものは我慢せず所有したいと考えています。そんな私の価値観を、不定期ですが披露したいと思います。

斉藤由貴生

第31回 程度の悪いブランド品が売れるって本当?

 カバンといえば腕時計に次ぐ高級品の代名詞。そして、腕時計と同じくプレミア価格になるモノが存在するという珍しい存在です。  プレミア価格のバッグといえば、エルメスのバーキン。バーキンは定価よりも高い価格で中古が販売されているってことも珍しくないため、買った値段よりも高い額で売ることが可能でしょう。

エルメス「バーキン」

 しかし、カバンのような革の実用品は、程度が悪くなりやすいため注意が必要です。腕時計の場合は金属ブレスレットや金属ケースは消耗品と認識されず、使おうと思えば何十年だって使えます。けれども腕時計に装着される革ベルトは消耗品とみなされ、数年で交換するというのが一般的です。つまり、革は傷みやすいということが当たり前なのです。ですから、革製品の耐用年数は腕時計ほど長くはありませんし、痛みのスピードも速い。よって、時計のように「買って⇒使って⇒売る」という流れに持っていくためにはハードルがかなり高めです。  0円になりにくかったり、そこそこ価格が安定していたりと、投資対象として高級バッグも条件は良いのですが、「買って⇒使って⇒売る」には傷みやすい、すなわち程度が変わりやすいという欠点があるのです。  もちろん売ることを前提としなければ、以前のフェラガモの例のように、長期間使えば実質お得ということもあるでしょう。しかし、100万円するバーキンは100年使わないと「年1万円で済んだ」ということにはなりません。靴であれば長く使うことにより、安い靴を買うより得したということが可能でしたが、特に女性用エルメスの人気商品となるとそういうわけにいかないほど高額です。  そして、腕時計のように買った値段と遜色ない額で売るということもできないので、何十万円という価格を支払う際、実際にその「何十万円」が消える覚悟で支払わないといけません。腕時計のように「60万円で買って120万円戻ってくる」ということはまずないです。

高級バッグをなるべくお得に所有するにはどうすればいい?

 とはいえ、せっかくですからカバンも価値のあるモノを持ちたいという人は多いはず。高級バッグは一定の人気がいつの時代もある「憧れの品」です。そこで、私が考えたカバンの買い方が、「程度の悪い中古品」を買うということ。例えば、カバンの中古品のグレードにおいて良い順に、Aグレード、Bグレード、Cグレードがあったとします。Aが45万円、Bが20万~30万円、Cが15万円だとしましょう。ここで重要なのが最低価格。つまり、どんなに程度が悪くなったとしてもCの15万円という額は保証されます。よって、Cグレードのモノを買っていれば、どんなに使い込んだってCグレードに変わりありません。一方、なんとなく綺麗なモノが良いと思いAを選んでしまったら、最悪15万円まで値下がりするかもしれない。つまり、Aを選ぶということは30万円消える可能性があるということになります。

3年前に17万8000円で買った中古のエルメス「サックアデペッシュ」

 ところが、最初から使い込まれたCグレードの品を買えば、どんなに使い込んだってCグレード以下にはなりません。ということは15万円で買って15万円で売れる可能性があるのです。とはいえ、程度の悪い製品って魅力も半減しているのが事実。だって汚いモノをあえて買おうって思わないじゃないですか。そこが難しいところでもあります。よって、カバンの中古品をお得に買うのであれば、ある程度損が出る覚悟が必要です。  私の基本方針は売る前提ですが、モノによって向き不向きがあります。腕時計は、耐用年数が長いため、単なる消費から「買って⇒使って⇒売る」という投資へ変化させることによって、モノの支配下からの脱却を実現しました。カバンは、綺麗に使うということが困難なため、雑に使ってなんぼだと思っています。それでも「良い状態の値段-最も程度の悪い状態の値段=実際に消費した額ということを意識すれば、高級ブランドのカバンでもお得に買って使うことができるのです。
1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。母方の祖父はチャコット創業者、父は医者という裕福な家庭に生まれるが幼少期に両親が離婚。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を個人で請負い収入を得る。それを元手に高級腕時計を購入。その頃、買った値段より高く売る腕時計投資を考案し、時計の売買で資金を増やしていく。高校卒業後は就職、5年間の社会人経験を経てから筑波大学情報学群情報メディア創成学類に入学。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある

もう新品は買うな!もう新品は買うな!

もう大量消費、大量生産で無駄遣いをするのはやめよう


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