更新日:2023年04月27日 10:48
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居酒屋経営で借金500万円を背負った男。結婚を約束した彼女にも逃げられ…

 ほかの業種に比べると、新規参入が容易な飲食ビジネス。だが、流行り廃りの激しい業界で「開業から10年経って生き残っている店は1割」とも言われているほどだ。
日本政策金融公庫『新規開業パネル調査』

画像:日本政策金融公庫『新規開業パネル調査』

 日本政策金融公庫が2016年に発表した『新規開業パネル調査』の結果を見ると、2011年に開業した「飲食店・宿泊業」のうち、18.9%が廃業。これは「情報通信業」の15.8%、「小売業」の14.5%を上回り、事業継続がもっとも大変な業界ということを意味する。 ■2011年に開業した各業種の2015年末時点での廃業率 1位 飲食店・宿泊業 18.9% 2位 情報通信業 15.8% 3位 小売業 14.5% 4位 教育・学習支援業 12.5% 5位 卸売業 11.5% 6位 運輸業 10.1% 7位 その他 8.3% 8位 建設業 6.6% 9位 個人向けサービス業 6.1% 10位 事業所向けサービス業 6.0% 11位 医療・福祉 5.5% 12位 製造業 5.0% 13位 不動産業 4.3% ※日本金融公庫『新規開業パネル調査』より  また、少し古いデータだが、総務省『事業所・企業統計調査(平成18年)』では、居酒屋を含む「酒場・ビヤホール」の5年以内の廃業率は39.8%。こうしたデータからも10年以内に9割の店が消えているというのもあながちウソではないようだ。

29歳で居酒屋をオープンさせるも…

「ウチの居酒屋は、最初の5年間は私の意地もあって続けていましたが売り上げが全然伸びず、開業から6年半で店を閉めました」
貧困

田代さん

 そう話すのは、元居酒屋オーナーの田代亮さん(仮名・39歳)。21歳のときに飲食チェーンではアルバイトを始め、そのまま正社員に。10代のころから「将来は自分の店を持ちたい!」と思っていたそうで、目標を叶えるためのステップだったとか。  30歳までには独立すると決めていたそうで、実際に29歳のときに会社を退職。自分のお店をオープンさせる。  ちなみにお店があったのは、神奈川県内の某駅から歩いて7分ほどの場所。最初はお客もそこそこ入っていたそうだが、2年目3年目と年を追うごとに売り上げは落ちていったという。 「同じエリアで、より駅に近い場所に安さを売りにするチェーン系の居酒屋が次々と進出してきたんです。そういうお店が比較的少ない地域を探して出店したのですが、これは大きな誤算でした。ウチは個人店舗なので大量仕入れで価格を抑えることもできず、廃業前の2年なんて週末以外はほぼ開店休業の状態。苦し紛れにランチ営業を始めましたが、それもパッとしませんでした」

現在は500万円の借金返済に追われる日々

 居酒屋経営の失敗は、自身の見通しの甘さが招いたこと。今となってはそれが痛いほどにわかると言うが、廃業して残ったのは500万円の借金。再び出店するための資金力はおろか、リベンジしようという気力もなかった。 「廃業に至ったのは私の責任です。最初は自信がありましたが、店を潰したという事実にすっかり心が折れてしまった。あと、借金の存在も重くのしかかっていました。結婚を約束していた彼女がいましたが、一方的に別れを告げられてしまったんです。当時の状況を考えれば仕方のないことですが、精神的にも一番きつかったですね」
貧困

田代さんの居酒屋があった場所。現在は更地に

 その後はビジネスホテルに就職。朝食バイキングの調理スタッフとして働いているが、月収は手取りで約22万円。ローン返済に月々5万円のほか、ボーナス時には15万円を払っているが、残債はまだ300万円近く残っている。 「家は学生が住むような家賃5万3000円のワンルームのアパートで、固定費を除くと自分が使えるお金は食費込みで月7万円ほど。実家は北陸なんですが、交通費がかかるので何年も帰省していません。友達や親族から結婚式の招待状が届くこともありますが、ご祝儀を払う余裕がないので、いつも欠席にマルをつけて返信しています」
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一生独身を覚悟している
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ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。

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