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東京五輪でも注目!エンタメ化したネオ・フェンシングの魅力と課題

“細かすぎる解説”で素人でも楽しめる工夫

 肝心の試合のほうもとても充実しています。この日は女子フルーレの準決勝・決勝、女子サーブルの決勝の合計4試合しか実施しないという少数精鋭での全日本選手権。試合が少ないぶん、試合前後の煽り演出もたっぷりと行えますし、各試合のレベルや緊張感は高く、どの一瞬も目を離すことができません。  フェンシングは近年の強化策が順調に実り、男子に関してはエペ団体がワールドカップ団体優勝、個人でも見延和靖選手が世界一となるなど、東京で「金」が狙える競技となってきています。女子もフルーレ団体がアジア選手権を制するなど上り調子。  この日観戦した女子フルーレ準決勝・決勝では、美女剣士として知られる東晟良さんが三連覇を目指すなか、ともにアジアを制した団体メンバーである辻すみれさんがまさに「完封」と言うべき内容でこれを撃破し、初の全日本王者に輝きました。強い選手をさらに上回って勝つ、という充実の試合内容でした。  辻さんの固いディフェンスとそこから繰り出すカウンターアタックの正確さ。動きが早すぎて目では追い切れませんが、巨大モニターでのスロー再生&フェンシング・ビジュアライズド、そして携帯ラジオからの的確な解説によって、素人目にも「何となくわかった感じがする」ように伝わってきます。  特に場内ラジオは、語り口も軽妙で聞きやすく、そして「速過ぎて何がどうなったか全然わからない」という素人目線に配慮した、起きたことを逐一丁寧に教えてくれる解説で、大変わかりやすいものでした。辻選手の低い態勢について、頭を下げると身体の有効面を隠したということで反則になるが、頭を下げずに前を見たまま攻撃をしているのでセーフなんですといった技術論や、辻選手が「アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』が好きなので、剣や靴を登場するキャラクターのカラーリングにしている」という細かすぎる解説もあり、観衆からは笑いがこぼれる一幕も。

薄暗いステージで選手たちだけが明るく照らされる、オシャレな雰囲気

全部の剣が緑+紫のエヴァ初号機カラーになっている辻選手

「すごいなぁ」と率直に感心しました。  家族と関係者がスタンドを埋め、客よりも選手のほうが多かった2015年のフェンシング全日本選手権とは隔世の感があります。贅沢空間で見る、最新エンターテインメント。フェンシングは確かに変わりました。  ただ、同時に、「これが天井では?」という感覚も抱きました。これだけの工夫を重ね、エンタメ化したにも関わらず会場は完全に埋まり切ることはなく当日券の発売もされていました。入りとしては8割くらいだったでしょうか。  しかもその8割のなかには家族・関係者に加え、数多くのスポンサー企業様が含まれており、たびたびスポンサー様がモニターに映し出されては、「初めて見にきたけれど楽しいです」的な感想が披露されます。競技間のインターバルでは、太田会長自ら観客席をまわって御礼のご挨拶もしていました。結構な割合で「客以外」の人がいたのです。

スポンサー様からはありがたい賞品の数々も提供いただきました。上位入賞者の副賞は「おせち料理」

優勝者への副賞は「時計」「辛子明太子」「アクセサリー」など

スポンサー様を表彰する感謝の儀式も

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いい感じの穴場感が漂うフェンシングに期待
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