更新日:2023年05月15日 13:18
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尾崎豊の曲は永遠の精神安定剤。バイクを盗まないし窓ガラスも割らない

 「盗んだバイクで走り出す」「夜の校舎窓ガラス壊してまわった」。代表曲『15の夜』『卒業』のインパクトある歌詞が独り歩きし、26歳で夭折した尾崎豊には、10代のカリスマ、反抗、不良というパブリックイメージがある。しかし死去から27年経った現在も男女問わず幅広い世代に愛され、新しいファンを獲得し続けているその魅力は、果たして反骨のスピリットだけなのだろうか?   3組の尾崎を愛する人達の言葉から検証する。

<尾崎 = 不良ではない! 優しい曲が沢山ある!>

尾崎豊に人生を変えられた人たち

 ファン同士の“尾崎婚”をした安藤浩さん(42)&留美さん(44)夫妻。妻の留美さんは「尾崎に詳しくない人たちは“バイクを盗んだ”“窓ガラスを割った”と思って、尾崎=悪いヤツ、そのファン=不良という印象を持ちがち。でも実際は盗んでもいないし割ってもいない。それは尾崎の友人たちの話です。世間で有名な尾崎の曲といえば『15の夜』や『卒業』ですが、そうではないアルバム収録の楽曲も聴いてほしい。優しい曲が沢山ありますから」とファン歴33年ならではの情報を交えて否定する。  森田真美さん(55)、その息子・宇都裕也さん(26)&美玖さん(25)夫婦、孫の陽暉くん(4)、月乃ちゃん(2)は3世代尾崎ファン。真美さんは「尾崎に興味がない人に尾崎ファンであることを伝えると、“バイクを盗む人だよね?”というリアクションが返ってくる」と尾崎ファンあるあるを語りながら「優しい人でなければ、新聞配達をしながら猫に餌なんてあげません」と少年期のエピソードを引き合いに出して尾崎の優しい人柄を語る。  息子・裕也さんは「尾崎の曲は愛を知る手助けをしてくれる」といい、妻の美玖さんは「母親になったことで尾崎の曲の印象も変わりました。特に『誕生』の“誰も一人にはなりたくないんだ それが人生だ 分かるか”という最後の語り部分が凄く染みるようになった」と母性を刺激された。  留美さんいわく「尾崎の歌は不良イメージとは真逆で、むしろ優しい。普遍的な愛を歌っていて、人間としての愛が基本にある。言い方は悪いかもしれないけれど、永遠の中二病。だからこそいつの時代も中高生に響く」と分析。夫・浩さんは「今では尾崎さんのファンとの交流が生まれ、結婚もできましたが、20代の頃は友人もおらず、休日は家に引きこもり状態でした。だからこそ尾崎さんの孤独に染みる声に支えられて今の自分があると実感。僕にとって尾崎さんとは“魂”です」と出会いに感謝する。 『15の夜』『卒業』でもなく、『街の風景』『十七歳の地図』に衝撃を受けて、ひきこもりを克服した栗山大輝さん(22)は「尾崎はカッコつけだけれど、音楽では本来の弱い自分をさらけ出す。そのギャップに惹かれる」と分析し「尾崎の曲に“頑張れ!”という曲はありません。頑張れと背中を押すのではなく、寄り添ってくれる。まるで永遠の精神安定剤のようなもの」と温もりを強調する。

<時代を超えて愛される、尾崎豊の魅力とは?>

映画『尾崎豊を探して』より。(C)2019「尾崎豊を探して」製作委員会

 尾崎の魅力について真美さんは「人間誰しもが持つ弱い自分、醜い自分を尾崎は隠さない」、留美さんも「カッコつけだけれど飾らないし、自分を表現したいという気持ちが強い人。ライブでも全身全霊で出し切ってくれるから心に響く」と表現者としての姿勢をリスペクトする。それだけに1992年4月25日の喪失は計り知れないものだった。  真美さんは「泣くというか、目玉から涙が落ちてくる感じ。何をしていても泣いてしまい、仕事も1週間休みました。これから生きていけるんだろうか?と真剣に思い悩んだし、尾崎ファンからは『みんな死ぬな!』との号令がかかった」と衝撃を振り返る。留美さんも「あまりのことで、死ぬことすら考えられない状態。尾崎ファンだった女の子が一人自殺してしまったのはショックでした」と肩を落とす。  そんな心の空洞を埋めてくれたのは、尾崎の歌碑(※渋谷クロスタワーのテラスにあるファンの集いの場)に誕生日や命日に集まるファンとの交流だった。真美さんは「日常で愛や人生について語ると、“急にどうしたの!?”と笑われてしまうけれど、尾崎ファンとだと真剣に語り合える」と嬉しそう。尾崎の誕生日や命日にファンとの集いを行っている安藤夫妻は「みんなで尾崎のライブ映像を見て、尾崎のMCぶりを突っ込んだり、モノマネをしたり、みんなでワイワイ」と尾崎を友達のように捉えて、明るく楽しく語り合っているという。

<「尾崎を知らない若い世代にこそ観てほしい」>

映画『尾崎豊を探して』新ビジュアル (C)2019「尾崎豊を探して」製作委員会

 400時間にも及ぶ映像記録から構成された映画『尾崎豊を探して』は、12月27日(金)よりTOHOシネマズ新宿にて先行ロードショーされ、2020年1月3日(金)には、2週間限定で全国公開される。生粋の尾崎ファン3組は「尾崎を知らない若い世代にこそ観てほしい」と口をそろえる。栗山さんが「尾崎に触れたことのない人にチケットを譲りたいくらい」と笑えば、留美さんも「私たちのようなファン以上に、ファンでない人にこそ観てほしい」と願い「そこで心に響いたり、気になるようなことがあれば補足説明をしてあげたい」と尾崎との絆と仲間の輪が広がることを期待している。
(取材・構成:石井隼人)
1984年生まれ、映画好きフリーライター!インタビュー、取材、レビュー、オフィシャルカメラマン、オフィシャルライター
…なんでもやるのでいつでもどこでもなんでもお仕事の御用命お待ちしております!映画パンフレットも結構書いてます!買ってください!

映画『尾崎豊を探して』
12月27日(金)よりTOHOシネマズ 新宿にて先行公開
20年1月3日(金)~1月16日(木)2週間限定全国公開!
配給:東京テアトル/ライブ・ビューイング・ジャパン

公式HP:https://ozakisagashite.jp/

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