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「倒産しかない…」中小プラスチック工場から悲鳴。CO2削減の裏で

環境に良くない企業には融資が止まる?

 業界にもたらす影響は、収益の低迷だけではない。関西に本社を置く中堅成形メーカーの人事担当はこう話す。 「昨年の8月ごろまでは、例年と同じくらいの学生がOB訪問していましたが、10月になると例年の半分以下になった。原因として考えられるのはグレタさんの存在。9月の彼女の演説はマスコミでも盛んに取り上げられたので、気候変動の元凶としてやり玉に挙げられているプラスチック業界に見切りをつけた人が多かったのでは。  ウチは実際はプラスチックといっても耐久財の割合が大きいのですが、業界のイメージが悪いですからね。このままでは深刻な人手不足になることは必至です」
グレタ倒産

プラスチック関連の中小企業の多くは西日本にある(写真はイメージです)

 そんなプラスチック業界のイメージの悪化は、政府の失策によるところもあるという。日本プラスチック工業連盟専務理事の岸村小太郎氏は話す。 「’18年6月に行われたG7サミットで、海洋プラスチック憲章に日本とアメリカだけ署名しなかった。安倍首相は『国内業界との調整が取れていない』ことを理由にしたんですが、これによりプラスチック業界への風当りが非常に強くなった。我々業界は日ごろからプラスチックの海洋ごみ問題や使用済みプラスチックの有効利用に積極的に取り組んでおり、憲章にも署名するものと思っていた」  国内各所で影響が出ているが、今後は倒産などが増えるのか。経済評論家の加谷珪一氏は言う。 「グレタさんの主張する温暖化対策には、背後に世界の金融業界の意向が大きく働いている。近年、ITやシェアリングエコノミーの普及により、大型の新規設備投資が少なくなってきていて、金融業界としては大きな利益を生む融資先が減ってきている。そんななか、新規の大型案件が期待できる分野はもう環境分野しかないのです。  世界49か国130の金融機関は、グレタさんの国連演説の前日に、『国連責任銀行原則』に調印しています。これはSDGs(持続可能な開発目標)とパリ協定を順守しない企業には融資を行わないとする内容です。こうしたなか、今後は環境分野にどんどんマネーが流れていきます。  プラスチック業界のなかでも、生分解性プラスチックやリサイクル分野で今以上に成長していく企業も出てくるでしょう。ただし、責任銀行原則に対応できない零細企業などは資金調達もできず、淘汰されるしかない。社会の格差という面では広がっていく懸念もあります」
グレタ倒産

米タイム誌はグレタさんを「最も影響を与えた人」に選んだ

 前出のSさんは証言する。 「業界内では3、4月に倒産が相次ぐという観測がある。7月にレジ袋が廃止になるため、納品先から契約終了の通達が3~4か月前にされることが多いためと、年度末の節目を切られてしまうから」  経産省によると、’18年時点で、国内には約1万2000社のプラスチック製品製造企業が存在し、従業員は約40万人以上いる。温暖化対策も大切だが、環境保護に向け、業界も変化しようと試行錯誤している。業態変換のための猶予期間も必要ではないだろうか。
グレタ倒産

7月から全国でレジ袋が有料に。写真はエコバッグを推奨する小泉進次郎環境大臣(中央)

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