社員の個人目標に求められる条件「SMART」
――アマゾンでは、社員ひとりひとりも、予算や目標があるんですか?
星:毎年4月に年間目標を立てます。会社全体の目標、各国法人の目標、事業部ごとの目標があり、それをブレイクダウンしていき個人の目標となります。こうした数字のターゲットだけでなく、自分のリーダーシップや語学力などのスキルなどについても目標を立てますね。
――そのあたりはあまり、変わらないですね。
星:特徴的なのは、目標を立てるときに、
「SMART」が求められるということでしょうか。
Sは「Specific」具体的であること。
Mは「Measurable」測定可能であること。
Aは「Achievable」できもしない目標ではなく、自分の力を120%出すことで達成できるもの。
Rは「Relevant」会社およびチームの目標に関連していること。
Tの「Time Bound」は時間軸がはっきりしていること。ダラダラやるのではなく、期限を明確にする。
このSMARTにもとづいて、いくつかの個人目標を立てるんです。
――その目標を達成できなかったら、どうなるんですか? 失敗は許される?
星:先ほど、結果が失敗だったから飛ばされることはない、と言いましたが、パフォーマンスに対しては、非常に厳しいです。
ただ、目標を達成できなかったから、すぐにダメというわけではありません。4月に立てた個人目標に対し、まったく到達できていなかったら、上司と部下とで改善プランを立てていきます。数字への達成率よりも、リーダーシップスキルに対する評価軸の方が重要視されます。もう1回、短期的な目標値をたてて一緒にやっていこうと、コミュニケーションをとりながら改善していきます。
――採用については、日本企業と違いはありますか?
星:日本はエキスパートを採用するのではなく、新卒一括採用でおしなべて同じような教育レベルの人を雇って、長期的に教育をしていきますよね。採用人数も、ほぼ毎年、同じ水準を保っている。
一方、アマゾンは必要なときに必要な人材を採るという考え方なんですね。来年のプロジェクトには何人、どういうスキルセットの人が必要、といった形で、採用の人数や採用する人の中身を変えます。状況にあわせた臨機応変の採用の仕方ですね。
長期的に同じようなスピードで企業が成長していくのであれば、新卒一括採用のほうが理にかなっているとは思いますが。
――でも、長期的どころか、短期的にも成長していません。
星:そうすると、入ってくる人の“階段”を作るために、役職がどんどん生まれてしまう。日本企業では、「なんとか代理」「なんとか補佐」とか、
とんでもない数の役職があったりしますよね。結果、何かを決めるときでも、上司のハンコを順番に10個もらう必要があったり、決断が遅くなってしまいます。
アマゾンは階層が3~4つしかなく、組織として非常にフラットです。上下のヒエラルキーは日本企業以上に明確ですが、階層が薄いので、コミュニケーションは取りやすいですね。
たとえば、私の最終的な職級はレベル8のディレクターで、さすがにジェフ・ベゾスと直接話すことは数回しかありませんでしたが、その次の階層の人と直接話せるくらいのレベル感。非常に風通しはよかったですよ。