更新日:2023年05月23日 17:28
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「北方領土返還は国益に結びつく?」一般人の疑問に佐藤優の見解は…

 “外務省のラスプーチン”と呼ばれた諜報のプロ・佐藤優が、その経験をもとに、読者の悩みに答える!
知床峠から国後島

国後島(知床峠から)

北方領土の返還は日本の国益に適うのか?

★相談者★ キング(ペンネーム) 不動産業 男性 50歳  3年前から札幌に住んでおります。さて北方領土の件です。歴史的観点はもとより先祖より御縁のある人々の心情を思料すると返還されるべきと思っていましたが、人口減少の今後、立地条件・維持管理の観点も踏まえ、果たして北方四島返還が国益に結びつくのでしょうか? ◆佐藤優の回答  そもそも国益を経済合理性の観点からのみで考えるのは間違っています。もしそのような発想をするならば、中央政府からの財政的支援なくして成り立たない過疎地域は、整理してしまったほうがいいということになります。北方領土返還が、わが国益に適うのは、あの戦争で、日本はソ連との関係において侵略された側であったという歴史認識です。歴史的な正義を回復するのが、北方領土返還の基本的動因です。  現実的な外交交渉を行えば、北方領土の返還は実現できます。この点で、北方領土問題に通暁した鈴木宗男参議院議員(日本維新の会)の見解がとても参考になります。 =====  本気でこの問題を前に進めようとするならば、2島返還、正確に言えば「2島返還プラスα」しかない。外交には「100対0」の勝利はない。国の尊厳と名誉がかかっている交渉で、どう折り合いをつけていくか。それが政治家の腕の見せ所だ。(中略)私がこの問題について、どうしてもやらなければならないと思う理由は、かつて北方4島で暮らしていた島民たちの気持ちがあるからである。  自分の生まれ育った島から追い出された人々も、その平均年齢は83歳になっている。当然ながら、残された時間は短く、いつまでも時間をかけることはできない。  まだ、先祖の墓が島に残っている元島民もたくさんいる。まず、島には自由に往来できるようにすること。そして2島でも返還してもらうこと。また国後島周辺の海を使わせてもらうこと。それを喫緊の課題として実現させなければならない。(『人生の地獄の乗り越え方――ムネオを救った30の言葉』90頁) =====
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2島返還交渉をできるだけ早く進める必要があります
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’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数

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