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新型コロナウイルスは「正しく恐れる」ことが重要/佐藤優

 “外務省のラスプーチン”と呼ばれた諜報のプロ・佐藤優が、その経験をもとに、読者の悩みに答える!
マスク

※写真はイメージ

新型肺炎で「中国人お断り」にすることは差別なのか?

★相談者★ パンデミック(ペンネーム) 会社員 男性 45歳  新型肺炎が中国の武漢から広まって、日本では「中国人お断り」の店が出てきて、これが差別だとニュースになっています。しかし、本当なら国を挙げて中国人の入国を防ぐのが、当たり前の防衛策なのではないかと思いました。  すでに中国からの入国を禁止している国が出てきているという話も聞いています。国民(お店の場合はお客さん)を命の危機から守るためには「中国人お断り」はやむを得ないのではないでしょうか? 佐藤様の意見を伺えたら幸いです。 ◆佐藤優の回答  新型肺炎は確かに深刻な問題ですが、少し騒ぎすぎです。実際の脅威とメディアを通じて体感する不安の大きさが乖離しすぎています。インフルエンザで’18年に日本国内で亡くなった人は3325人もいます。それと比べて新型肺炎が猛威を振るっているということはできないと思います。  この点で、テロとの類比的思考が重要になります。イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏は、テロの脅威について以下のような見方を示しています。 =====  テロリストはマインドコントロールの達人だ。ほんのわずかな数の人しか殺さないが、それでも何十億もの人に恐れを抱かせ、EUやアメリカのような巨大な政治構造を揺るがしてのける。2001年9月11日の同時多発テロ以来、毎年テロリストが殺害する人は、EUで約50人、アメリカで約10人、中国で約7人、全世界(主にイラク、アフガニスタン、パキスタン、ナイジェリア、シリア)で最大2万5000人を数える。  それに対して、毎年交通事故で亡くなる人は、ヨーロッパで約8万人、アメリカで約4万人、中国で27万人、全世界で125万人にのぼる。糖尿病と高血糖値のせいで毎年最大350万人が亡くなり、大気汚染でおよそ700万人が死亡する。それならばなぜ私たちは、砂糖よりもテロを恐れ、政府は慢性的な大気汚染ではなく散発的なテロ攻撃のせいで選挙に負けるのか?  テロは「恐怖」というこの言葉の文字どおりの意味が表しているように、物的損害を引き起こすのではなく恐れを広めることで政治情勢が変わるのを期待する軍事戦略だ。この戦略はほとんどの場合、敵にたいした物的損害を与えられない非常に弱い集団が採用する。  もちろん、どんな軍事行動も恐れを広める。だが通常の戦争では、恐れは物的損害の副産物にすぎず、害を及ぼす勢力の大きさにたいてい比例している。ところがテロでは、恐れが主役で、テロリストの実際の力と、彼らがまんまと引き起こす恐れとは、驚くほど不釣り合いだ。(『21 Lessons――21世紀の人類のための21の思考』211~212頁) =====
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