仕事

10万円稼いで一人前!? 現役アニメーターに聞く“過酷な現場”

最後は「絵」がものを言う

――では、これからのアニメーターの働き方はどのようになっていくと思いますか。 西位:じつはアニメーターって、ほとんどがフリーランスなんです。しかも、それを働いている当人もよく分かっていなかったりする特殊な業界です。でもこれからは、制作会社がアニメーターを囲い込んで、いわば社員化しないと回っていかない時代になってくると思います。  所属させることで、コストが高くて個人で導入するのが難しいデジタル機材も共有できるようになりますし、賃金の面でも今よりは保証されるでしょうから、会社としても“描ける”良い人材を確実に手元に置いておくことで、作品のクオリティを保つこともできます。 ――「働き方」について取材をしていると、多くの企業が「これからは総フリーランス化の時代だ」みたいな話をするんですよ。つまり、リモートワークとかテレワークとか、労働者が働き方を選べるようになっていくと、自然と会社に所属することを前提としない、プロジェクトベースの働き方になっていくであろう、と。でもアニメ業界では、その逆のベクトルに進みつつあるというのが面白いです。 西位:不思議ですよね。普通は独立してフリーランスになるのって、どこかの会社である程度経験を積んで、仕事ができるようになったらするものなのに、アニメーターの場合、十分に育ったところで「社員になりません?」ってなるわけで、なんやねんそれ!って思いますよね。 ――では最後に、アニメーターを志す人たちにアドバイスをいただけますか。 西位:得意なジャンルは2~3個あった方がいいと思います。今は全体的に描ける人が足りてない状態なので、一つでも標準レベルを超えているジャンルの絵があれば、それだけで相当ありがたがられると思います。  この業界は、とにかく「腕」がものを言う世界です。絵の技術を上げる努力だけは続けてください。最後には、絵の上手さが皆さんを助けてくれるはずです。  とまあ、いろいろ言いましたけど、アニメと絵を描くことが好きなら、本当にこんなに楽しい仕事はありません。だから、恐れず飛び込んできてください。それでは、戦場でお待ちしてます(笑)。

西位輝実著『アニメーターの仕事がわかる本』(玄光社)。アニメーターたちが抱える問題はフリーランスの闇を象徴している

取材・文/辻本 力 西位輝実●1978年、大阪府生まれ。大阪デザイナー専門学校を卒業後、スタジオでの経験を積み、現在はフリーランスのアニメーターとして活躍中。現在は作画監督、キャラクターデザインをメインに担当。代表作にNetflix『聖闘士星矢: Knights of the Zodiac』、劇場版『はいからさんが通る』、『ジョジョの奇妙な冒険 Part4 ダイヤモンドは砕けない』など。近著に『アニメーターの仕事がわかる本』(構成・文/餅井アンナ)がある。
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