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「素人」にしか反応しない下半身事情が素人に暴露された素人議員・高井崇志/鈴木涼美

立憲民主党の高井崇志議員が、緊急事態宣言発令後の4月9日に、新宿・歌舞伎町のセクシーキャバクラを訪れていたことが発覚し、立憲民主党は高井氏の除籍処分を決定した
キャバクラ

※写真はイメージです

私はイヌになりたい/鈴木涼美

 歌舞伎町の脇に住んでいた時、毎日通る道に「職業イケメン」と書かれた特大のホスト看板があって、帰る時はその文字の横で微笑するいかにも置物の顔をした美青年と目が合っていた。  置物ホストとは場を盛り上げたり気の利いたことを言ったりする才能がなく、良くも悪くも存在するだけでお金を儲けている者を指すが、超美形には昔からそんなタイプが多い。職業メンクイな女たちは、イケメンの隣に座る代償として自分で話題をふり、気が利かず無礼でつまらない男との時間をやり過ごす。  新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が発令された東京で、野党議員が歌舞伎町のセクキャバで120分しっかり遊んでいたことが物議を醸している。国民に外出自粛を呼び掛けている上に、夜のお店は都知事が名指しでアラートを出した。  さらに野党はこの状況下での首相の会食を厳しく追及していただけに、おじさん同士の会食よりずっと楽しそうなめくるめく息抜きは問題視され、党は除籍処分、辞職を求める声も上がる。  ただし、街の反応は多様で、ウイルスによる収入減の被害が甚大で、業種によっては国からの援助も限られている夜の街への「貢献」に否定的ではない者もいれば、客足の途絶えた時期に延長を繰り返した、店から見れば「良客」を平気で暴露したセクキャバ嬢を糾弾する者もいる。  どんな状況でも日常と性欲は続くので、すべての息抜きを否定はしないし、人間の逞しさと男の愚かしさを端的に表わす報道に呆れ笑ってしまうが、やはり公的に行くなと言われている場所に、公人が行って、それがバレれば叩かれて当然だとも思う。  バレたことが問題だとしたら、やはりセクキャバであることに一定の意味がある。セクキャバは夜業界では「お水」と「風俗」の中間に位置しており、水商売で切磋琢磨して稼ぐ気合も、風俗で体を張って稼ぐ気概もあまりないが、高収入バイトはしたいという「普通の女のコ」が働いていることが多い。  個人的にはキスという風俗のメニューで一番抵抗があるものが入っているのであまり割がよくないように思うが、それでも一線を越えたくないという昼職や学生との兼業の女性は多いのだ。  当然、そういう、振り切った売春婦の潔さも、プロのホステスの手練手管もない、やや中途半端な「素人」は日本人の情けない男の好物である。経験が少なそうで擦れてなくて、馬鹿にされないし威張れるし、かといって本物の素人ではないからブサイクにもオヤジにも優しくタッチしてくれる。  それはそれはめくるめく時間であっただろうが、素人風の嬢たちはやはり情報管理も素人風で、夜の掟に詳しくないのも致し方ない。イケメン好き女子たちが退屈な時間に耐えるように、日本全国にプレイ内容つきで気まずい息抜きの暴露をされるのは素人好きの代償なので、除籍も辞職も甘んじて受けるしかない。プロ意識と年齢が高めの店に行けばもう少し客を守ってくれたかもしれないが、そういった店の多くは営業自粛をしているし、そもそも情けない下半身がそれで反応しないなら仕方ない。 ※週刊SPA!4月21日発売号より’83年、東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。専攻は社会学。キャバクラ勤務、AV出演、日本経済新聞社記者などを経て文筆業へ。恋愛やセックスにまつわるエッセイから時事批評まで幅広く執筆。著書に『「AV女優」の社会学』(青土社)、『おじさんメモリアル』(扶桑社)など。最新刊『可愛くってずるくっていじわるな妹になりたい』(発行・東京ニュース通信社、発売・講談社)が発売中

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