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訪問ヘルパーの壮絶現場に密着。高熱が続く障がい者宅で過重労働の毎日

 感染拡大する新型コロナウイルスの影響は、医療界にとどまらず福祉業界にも及んでいる。東京都内の訪問介護現場では4月中旬、38℃以上の高熱を出した障がい者がPCR検査を希望してもなかなか受診できず、病院と保健所にたらい回しにされるケースが起きていた。
戸田さん

重度障がい者の戸田さん。PCR検査で「陰性」だったが、高熱が続く

 重症化しやすい「基礎疾患」があったが、PCR検査で「陰性」の診断結果が出たのは発熱から1週間後。ただ、男性は未だ熱が下がっておらず、余談を許さない状況が続いている。一方、担当したヘルパーは感染リスクの不安を抱えたまま仕事を続けている。既に2週間以上連続勤務を継続しており、関係者らは「ヘルパーが安全に介護に当たれる防護態勢と速やかなPCR検査受診につなげなければ、介護現場が崩壊しかねない事態だ」と危惧する。

よぎる最悪の事態…「感染拡大避けたい」と16日間連続勤務

介護 訪問介護ヘルパーの田中誠司さん(仮名・30代)は、16日間連続で重度身体障がい者の戸田晃一さん(仮名・40代)宅を訪れている。トイレの行き来など生活に必要な介助をして、戸田さんの一人暮らしを支えている。午前9時~午後10時までの13時間勤務が連日続き、さすがに疲れの色を隠せない。ヘルパーを派遣する運営事業所は勤務実態を知っているのかと尋ねると、田中さんは「こういった状況なので、あくまで現場任せ」とあきれ交じりだ。  田中さんが2週間連続勤務を続ける理由は、戸田さんの体調が心配だからだ。  訪問介護ヘルパーとして4月10日朝に戸田さん宅を訪れた。戸田さんが息苦しさやけん怠感を訴えたので、熱を測ったところ36.8℃。微熱だったが、田中さんは「新型コロナウイルスの初期症状と類似しているので、もしかしたらと少し慌てた」と振り返る。  最寄りの保健所へ電話相談すると、医療体制が整っているA病院を受診するよう言われた。診断した医師からは「とりあえず様子を見ましょう」と言われ、風邪薬を処方されただけ。帰宅後に改めて体温を測ると、戸田さんの体温は38.3℃に上昇していた。

コロナかも…クラスター発生防ぐため「熱下がるまで勤務する」

車いす

戸田さんの家の前にある車いす

雨合羽

戸田さんが熱を出して以降、田中さんは雨合羽を着て仕事をしている

マスク

田中さんが訪問介護中に着用しているマスク

手袋や除菌シート

事業所から支給された手袋や除菌シート

 田中さんは早くから信頼できる事業所の職員と連絡を取り、今後の勤務態勢を話し合っていた。「(戸田さんの)発熱が分かった初日と2日目は僕の勤務でしたが、その後は他のヘルパーさんが担当することになっていました。仮に新型コロナウイルスにかかっていたとしたら、一番やらなければいけないのは感染拡大を食い止めること。介護現場でのクラスター発生だけは避けたかった」と最悪の事態を想定していた。 「基礎疾患」を持つ高齢者が新型コロナに罹患した場合、重症化する恐れも感じていた。田中さんは「だからこそ、早くPCR検査を受けさせてほしかった。同じくヘルパーとして勤務する方の中には、お年寄りや小さい子どもと同居している方もいる。検査が受けられない段階で戸田さんに多くのヘルパーが入るのは避けなくてはならない。僕が介助に入っている戸田さん以外の障がい者、そこで働くヘルパー、その家族、と感染拡大させてはならない」と言う。事業所の職員と相談して、戸田さんの熱が下がるまで田中さんが勤務を続けることが決まった。
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発熱から1週間後にPCR検査
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