ニュース

北朝鮮「金正恩体制」崩壊後のシナリオ 妹・与正氏が政権引き継ぎか?

CNNがスクープした「重篤説」の真偽は?

 北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の「重篤説」を巡って、今なお情報が錯綜している……。 北朝鮮・金正恩 4月20日、米国・CNNテレビが米情報当局者の話として、金委員長が手術を受けた後、「大変危険な容体に陥っている」と報じた。  これと同じ日、韓国の北朝鮮専門ニュースサイト・デイリーNKも、「金委員長が12日に北朝鮮内陸部・妙香山(ミョヒャンサン)近くに位置する最高指導者専用の病院で心血管系の手術を受けたと見られる」と伝えたため、金委員長の健康に何らかの異変があったことがうかがえるが、デイリーNKによると、手術の結果は「良好」。「現在、金委員長は近くの別荘で療養中」としており、CNNとは違う見通しを示している。  CNNのスクープを受けて、翌日、韓国政府の報道官は「重篤説」を否定。ロイター通信も中国共産党対外連絡部関係者の否定的見解を報じたが、その一方で、高血圧や心臓病、糖尿病といった持病をいくつも抱えている金委員長には、常に「健康不安」が付きまとってきたのも事実だ。新型コロナウイルスの世界的パンデミックが広がるなか、北朝鮮当局は一貫して「感染者ゼロ」と喧伝してきた。  しかし、金委員長の「重篤説」を巡る一連の報道に触れて多くの人が真っ先に想像したのが、コロナウイルス感染の可能性ではないだろうか……。果たして、今回CNNが報じたスクープに信ぴょう性はあるのか? 龍谷大学社会学部教授の李相哲氏が話す。 「24日に韓国紙『東亜日報』は、『金委員長は別荘のある東部・元山にいて出発準備をしている』とし、米当局関係者が『車椅子なしで歩く金委員長の姿を確認した』と伝えています。ただ、それでも『重篤説』をすべて否定できるとは思えません。  金委員長は、多いときには一晩でワイン12本を飲むなど暴飲暴食癖が抜けないことで知られており、今も重い持病を抱えている。加えて、直前の3〜4月にかけて党の会議や現地視察を10回ほど行うなど激務をこなしており、大きなストレスもあったはず……。  祖父・金日成主席や父・金正日総書記はともに心臓疾患で亡くなっていますし、今回、金委員長が心臓のステント手術を受けたのは事実と見て間違いないでしょう。新型コロナウイルスの感染拡大が続いているが、北朝鮮が中国との往来を遮断したのは春節の後。中国からの観光客を受け入れる税関や観光地で働いているのは軍人やエリート層なので、ここを起点に平壌中枢にウイルスが運び込まれても不思議ではない」  金委員長の「健康不安」が拭えないのには理由がある。10日に予定されていた日本の国会に相当する最高人民会議が直前で延期となったが、仕切り直しで12日に開催された会議にも金委員長は「欠席」。  さらに、祖父である故・金日成主席の誕生日(太陽節)に当たる15日も、遺体が安置されている錦繍山(クムスサン)太陽宮殿に金委員長が参拝しなかったからだ。ソウル在住のジャーナリスト・朴承珉(パク・スンミン)氏が話す。 「太陽節は金一族の権力の正統性の証しである白頭山血統を内外に示す重要な場であり、金委員長も権力を継承して以降、一度も欠かしたことがありませんでした。つまり、このような重要行事を欠席せざるを得なかったのは、金委員長の健康状態が悪化している可能性が高いということ。’15年に足首にできた嚢腫の手術で40日以上、姿が確認できなかったときとは状況が違います。  過去、指導者に重病報道が出ると北朝鮮当局は動静を伝える反論報道を大々的に行ってきたのに、今回は、CNNがスクープを放った後もそうした動きは『友好国の首相に祝電を打った』と発表する程度で、金正恩の写真や動画などは一切報じられていません。私が取材した米国在住の北朝鮮高官は『金正恩が手術を受けたとされる妙香山には高度な医療施設などない』と否定しています。東亜日報が言うように、金委員長が現在、元山にいるのなら、コロナの感染対策で疎開した可能性も排除できない」  気がかりなのは、米朝間で繰り広げられている小競り合いだ。昨年3月に行われたハノイでの首脳会談決裂以降、米朝対話は再開の目途が立っていないが、新型コロナウイルスの世界的感染拡大を受け、米韓による合同軍事演習の中止が決定。トランプ大統領から金委員長に対して親書が送られるなど、水面下のせめぎ合いが続いている。李氏が話す。 「金委員長に万一のことがあったら、当然、体制崩壊に繋がる可能性は一気に高まります。米国が主導する経済制裁は北朝鮮のクビをじわじわと絞めつけており、昨年11月には、北朝鮮国内で大規模な飢饉も発生。  これにとどめを刺したのが、今回の新型コロナウイルスです。中朝国境が封鎖されている今、北朝鮮には中国からの物資がほとんど入ってこない状況が続いている。党幹部には大きな不満が燻(くすぶ)っているほか、飢餓状態の人民が蜂起する可能性も高まっており、中朝国境の封鎖が長引くとさらにリスクは増大するでしょうね。  ’90年代に韓国左派の金大中政権が太陽政策で北朝鮮に手を差し伸べたため金王朝は体制崩壊を免れたという見方もあるが、今回も先ごろ総選挙で勝利した文在寅政権という変数が加味されるはず。実際、金委員長が平壌に建設予定の病院の費用として文政権が1兆ウォン(873億円)を拠出するという話も出ています」
次のページ
妹・与正氏が政権を引き継ぐ準備はすでに整っている?
1
2
週刊SPA!5/5・12合併号(4/28発売)

表紙の人/ 西野七瀬

電子雑誌版も発売中!
詳細・購入はこちらから
※バックナンバーもいつでも買って、すぐ読める!
おすすめ記事
ハッシュタグ