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北朝鮮、毒舌姫でエスカレートする罵倒の系譜。安倍総理は“チビで卑劣”?

 風雲急を告げる、朝鮮半島情勢。北朝鮮お得意の“口撃”も、ひさびさに激しさを増しています。  金正恩朝鮮労働党委員長に代わり、妹の金与正氏が登場すると、言い回しはエスカレートする一方。脱北者団体が北朝鮮を批判するビラをまいたことに対し、 <裏切り者とくずの連中の罪過を絶対に容認してはならない> との声明を発表した後、6月16日に南北共同連絡事務所の爆破へとつながりました。
金正恩委員長と、妹・金与正氏

金正恩委員長と、妹・金与正氏。2018年4月27日/REUTERS POOL New – stock.adobe.com

 北朝鮮には、こうした文章を作成するエリート集団、“毒舌チーム”がある――と日本の複数のニュースショーが報じました。元毎日新聞記者でジャーナリストの西岡省二氏によると、北朝鮮の元外交官(現在は韓国の議員)が平壌国際関係大学の学生だったとき、授業で<仇の心臓にペンを刺す>との教えに基づいて毒舌文書を書く訓練をさせられたそうです(6月22日配信 Yahoo個人より)。  というわけで、ここからは過去にも聞かれた、伝統の悪口芸を振り返ってみましょう。

①安倍総理をひたすらこき下ろす

 2019年10月の北朝鮮による飛翔体の発射実験を日本政府が批判した際、宋日昊・日朝国交正常化大使は、<まるで核爆弾が日本の領土に落ちたかのように騒ぎ立てている>と反論し、続けて安倍総理個人を、次のように酷評したのです。  <愚かで性悪>、<卑劣>、<不道徳>、<チビで不格好>。さらに日本という国についても、<沈みつつある島国>、<希望のない荒廃した国家>と切り捨て、日本を相手にしていないとのメッセージを出しました。  新型コロナ以降、国民の批判にさらされている安倍総理でも、ここまでひどく言われたことはないのではないでしょうか?逆に、安倍さんでよくこれだけの形容詞が思いつくものです。可愛さ余って憎さ100倍、ということにしときましょう。 (参考:Newsweek 2019年11月8日

②トランプ大統領には肉弾戦を挑む

 トランプ大統領が金正恩氏を<ロケットマン>とからかい、金正恩氏は<精神が混乱したアメリカの老いぼれ>と言い返す。かと思えば、良好な関係をアピールするなど、奇妙なツンデレが続く最近の米朝関係。
2018年6月の米朝首脳会談を報じる新聞

2018年6月の米朝首脳会談を報じる新聞(C)Ifeelstock

 2年前は、こんな感じでした。北朝鮮の人権問題を取り上げ、先制攻撃も辞さないとしたトランプ大統領の一般教書演説。この「ブラッディ・ノーズ(鼻血)戦略」に、北朝鮮はこう応じてみせたのです。 <鼻血程度でなく、朝鮮の草一本にでも触れた瞬間、トランプ自身の背骨が折れ、アメリカ帝国は地獄と化し、米国の歴史は永遠に終わる。>(朝鮮労働新聞 2018年2月6日)  息のあった小気味良い応酬。プロレスのマイクパフォーマンスみたいです。 (参考:朝日新聞 2018年2月7日)

③惚れたら負け?韓国・文大統領、毒舌姫にののしられる

 一昨年の平昌冬季オリンピックで、一気に融和ムードが盛り上がったように見えた韓国と北朝鮮。ところが、ここ最近の流れを見ると、文在寅・韓国大統領の片想いだったようです。追いすがる者を谷底に突き落とす、ドSで冷酷な姫・金与正氏の発言を見ていきましょう。  文大統領の南北共同宣言20周年のビデオメッセージに対して、金与正氏は6月17日の談話で、 <冷や水を飲んで胃もたれしたような鉄面皮で図々しい内容>と一蹴。  立て続けに、 <南朝鮮当局者の演説を聞くと、我知らず吐き気を催した> <南朝鮮当局者は何を誤ったのかを認めることもせず、目クソほどの反省もない> <キツネも顔を赤らめる卑劣で奸慝(かんとく=あさましい)な発想> と、めった斬りにしていました。  思えば、金与正氏に会う時の文大統領の笑顔は、いつだってヘヴン状態でした。惚れてしまった者の弱みなのか、今のところグッとこらえているようです。 (参考:中央日報6月18日文春オンライン2020年6月21日
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<人間のクズ>と言われたのは…
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音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

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