北朝鮮の金政権を倒そうとする、謎の団体「自由朝鮮」の正体
金王朝打倒を掲げる「謎の団体」の片鱗が、少しずつだが明らかになってきた……。
3月28日、スペインの司法当局は、2月にマドリード市内で起こった北朝鮮大使館襲撃事件の「主犯格」とされる人物の名を公表した。男の名はエイドリアン・ホン・チャン容疑者。米国在住のメキシコ国籍を持つ活動家で、事件後、米国に逃れてFBI(米連邦捜査局)に情報提供していた疑いが持たれているという。
大使館に押し入ったのはチャン容疑者率いるおよそ10人の集団で、大使館職員らを手錠などで拘束し、コンピュータやハードディスクドライブを奪って逃走したが、26日には、金正恩体制を批判する脱北者支援団体「自由朝鮮(旧呼称「千里馬民防衛」)」が事件への関与を認める声明を発表していた。
チャン氏は同団体の主要メンバーとみられるが、そもそも「自由朝鮮」の名が世に知られるようになったのは、’17年2月に金正恩(キム・ジョンウン)・朝鮮労働党委員長の異母兄に当たる金正男(キム・ジョンナム)氏が、マレーシアの空港で殺害された事件に端を発する。事件を受けて、「千里馬民防衛」と名乗る団体が、正男氏の長男・漢率(ハンソル)氏の肉声を伝える映像をYouTubeに公開。
今年3月1日には「自由朝鮮」に名を改め、金委員長による独裁体制を批判。臨時政府樹立を宣言している。今なお拠点がどこにあるかさえ明らかになっていない「自由朝鮮」とは一体どんな組織なのか? 朝鮮半島情勢に詳しい龍谷大学教授の李相哲氏が話す。
「『自由朝鮮』の前身となる団体は、金正男殺害事件の後、当時、中国・マカオに滞在していた漢率氏ら残された家族を、第三国に脱出させるために全面的にサポートしています。漢率氏自身が公開された動画のなかで、オランダ、中国、米国のほか『ある政府』から支援があったことを明かし、特にオランダの駐韓大使の実名を挙げて謝意も示していることから、オランダはもちろん、いくつかの国の情報機関に支援者がいるのは間違いない。
つまり、『自由朝鮮』は以前から組織立って動いており、各国政府から支援を取りつけるだけのポテンシャルがあったということです。3月1日の『抗日独立運動100周年』の日に出された動画は、運動発祥の地として知られる韓国・ソウル市内のパゴダ公園で撮影されていた。12日には、金正男氏が暗殺された地、マレーシアにある北朝鮮大使館の外壁に、ハングルで『朝鮮を解放しろ』と落書きがされる騒動もあったが、『自由朝鮮』の国際ネットワークはすでに世界各国に広がっている」
在スペイン北朝鮮大使館襲撃事件
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