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マンガ『ちはやふる』の千早はなぜクイーンを目指すのか?

いまの仕事楽しい?……ビジネスだけで成功しても不満が残る。自己啓発を延々と学ぶだけでは現実が変わらない。自分も満足して他人にも喜ばれる仕事をつくる「魂が燃えるメモ」とは何か? そのヒントをつづる連載第183回 百人一首 人気マンガ『ちはやふる』(講談社)の主人公、千早には「競技かるたでクイーンになる」という目標があります。この目標を達成するために彼女は色々な努力を劇中で重ねていきますが、そうした現実面での行動が起きる前に、まず心の中で「クイーンになる」という決断をしています。  では、どうして彼女が「クイーンになる」という決断ができたのかというと、決断には必ず人物の影響があります。「あの時、あの人が、ああ言ったから、だから自分はこうするんだ」と考える体験をしていて、それがきっかけで決断するということです。千早の場合、影響を受けたのは新(あらた)というキャラクターです。  新は千早が小学校6年生の時に彼女のクラスに転校してきました。家が貧しいため住んでいるアパートも学校に着てくる洋服もボロボロで、また福井県から引っ越してきたため言葉にも訛りがあって、クラスメイトからからかわれていました。  千早はそうしたことには関わらない性格で、あることがきっかけで新の家に行って、二人でかるたで遊ぶことになります。その時に新が「競技かるたで名人になりたい」という自分の夢を語り、その言葉に心を揺さぶられた千早は、「競技かるたでクイーンになる」と少しずつ考えるようになります。  千早はもともと自分の夢を持っていませんでした。彼女には千歳という姉がいて、「姉が日本一のモデルになることが自分の夢だ」と考えていました。ただ、これは実際には姉の夢であって、自分の夢ではありません。  それが他の誰かではなく、「自分自身が競技かるたでクイーンになる」という夢を持つことで、彼女は百人一首を覚えたり、かるた教室に通ったり、かるた大会に参加したりといった、行動ができるようになります。これが「まず最初に決断があって、次にそれが目標になって、そのために努力を重ねる」ということです。  このように決断には常に人物の影響があります。そして、誰かに影響を受けるときは、「あの時、あの人が、ああ言ったから」という体験があります。こうした誰かに心を揺さぶられた体験のことを、マインドレコーディングでは「原風景」と呼んでいます。  誰かとのやりとりが原風景になるには、「相手の表情」という条件があります。千早の場合も、新とかるたで遊んだ時に、床に並べられた取り札に集中する彼の真剣な眼差しに心を奪われる、という描写が単行本第1巻でされています。  この描写は一度だけでなく、千早が回想する形で第2巻でも繰り返されています。新とかるたで遊んだ体験は、彼女の心に鮮やかに残っていて、「あの時、自分が知ったのはかるたじゃなくて、新の情熱だ」と振り返っています。そして、その情熱を感じたのは、新の真剣な眼差しに対してです。このように相手の表情があるからこそ、その体験が原風景になって、何かを決断するきっかけになるのです。  原風景はある日突然、いきなり起こるものではありません。たとえば千早の体験も、新が彼女のクラスに転入してきて、クラスメイトになったというきっかけがあります。もし仮に新が別の学校に転校していたら、二人が出会うことはなく、原風景になるような体験も起こりようがありません。
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思い出は何度も思い出すことで強くなる
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