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ご当地インスタントラーメンの世界。自宅にいながら地方の味をめぐる

職人技が光る北海道の最強塩ラーメン

 続いては北海道から「オホーツク塩ラーメン」をご紹介。  インスタントラーメンといえば、工場で大量生産されているイメージだが「実はこれ、麺やスープはもちろんですが、塩まで自家製なんですよ」と、こだわりの詰まった一杯だ。  さらにその美味しさには地の利もあるようで、大和氏は「サロマ湖の水は、地理的に海のミネラルと山のミネラルが合わさるので塩にするとすごく美味しいんです」と語る。「その塩スープは、カラマツの木で3日間炊き上げて、麺の乾燥にも3~4日かけるんです」と、徹底された職人仕事の上に完成しているのだという。  専門家の大和氏をして「究極の塩ラーメンをお求めの方だったら、オススメ」とまで言わしめる逸品だ。価格は1食、税込407円とインスタントラーメンとしてはやや高めだが、味は大和氏の折り紙つき。筆者はオリーブオイルをわずかに加えるアレンジを試してみたい。

まさかの食材が入った滋賀

 琵琶湖の東岸に位置する米原市からは「フルフル ラーメン」。2食入りで税込650円。  麺にすり込まれているのはなんと絹(シルク)だそう。寡聞にして絹が食べられるものだと知らなかった筆者に大和氏は「実は絹って食べられるんです。絹工場で働いているおばあちゃんたち、肌がツヤツヤなんですよ。絹って人間に必要な栄養素がたくさん含まれているんです。だからこのラーメンは“美容ラーメン”ですね」と教えてくれた。  近江と呼ばれるこの周辺は古くから養蚕業が盛んだったが、海外からの安いシルクの流入に一時は衰退。その苦境を打破すべく生み出されたのが、この商品だという。スープは、やさしい醤油味で、レモンが合うという。「レモンの香りを十分にだしたいなら、輪切りを入れるだけでなく、皮を凍らせて少し擦って入れていただくと本当に美味しいですよ」と、他の料理にも使えそうな知恵も伝授してくれた。

特異な食文化を持つ愛知の御三家

 愛知といえば、あんかけパスタや台湾ラーメンなど、独特の麺文化があるがインスタントラーメンについても「愛知には、スガキヤ・キリンラーメン(現キリマルラーメン)・山本製粉という“インスタントラーメン御三家”というものがあるんです」と大和氏は話す。  その中で今回はキリマルラーメンを販売している小笠原製粉の「インコラーメン」を取り上げたい。一体、なぜインコラーメンなのかとうかがうと「裏に“インコ臭がします”って書いてあるんですよ。僕もびっくりしたんですけど、インコを愛でる方ってインコを口に入れるらしい。でも食べちゃいけないから、代わりにラーメンにしようということでできたラーメンだそうです(笑)」と驚きの誕生秘話を教えてくれた。
大和イチロウ氏

リモート取材で、インコラーメンの魅力を語る大和イチロウ氏

 ただ、味がまったくイメージできない。専門家である大和氏をしても「これだけは説明しづらい! とにかく、インコ臭が胸いっぱいに広がりますので(笑)。ベースはとんこつスープで、そこにスパイシーさが加わって独特な味になっています」とのこと。インコラーメンの味が本当にインコ臭かどうか知りたければ、事前にペットショップに行ってインコを嗅いでからにした方が良いかもしれない。刺激が欲しい方にとっては、チャレンジする価値ありの一杯になるだろう。
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復興途上の岩手絶品うにらーめん
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Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

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