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ご当地インスタントラーメンの世界。自宅にいながら地方の味をめぐる

復興途上の岩手絶品うにらーめん

 東北からもう一品ご紹介いただいたのは、岩手の「うにらーめん」だ。震災からの復興途上にある東北の中で、ラーメン産業が元気を取り戻し始めているのが岩手県だという。 「ウニのラーメンはあんまりなかったんですが、三陸産のウニのペーストをスープに使っているので、コクがあるスープになってますよ」  スープにウニの風味が入ることは商品名からもイメージできるが「麺にも、ウニ殻パウダーが練りこまれているので、カルシウムを豊富に含んだ健康にもいい麺になっていますね」と、麺にまでウニが使われているという。  大和氏は、ウニの美味しさを味わうために、そのままでも十分美味しいとしながらも「山芋や納豆など、ネバネバしたものがよく合いますよ。他にはもずくもすごく美味しかったですね」とアレンジレシピも教えてくれた。コロナのなかで、風化が加速してしまいそうな震災の復興だが、その一助に食べる支援も良いかもしれない。

大和氏の本拠地大阪マヨラーメン

 最後に紹介してくれたのは大阪の「マヨラーメン」。 「世界で唯一の味で、白湯とんこつベースのとんこつマヨネーズ味なんです」と話す大和氏。 「一般的なインスタント麺は植物由来のパーム油で揚げるんですが、このラーメンは麺を揚げるのに黒豚ラードを使ってるんですよ。だから、食べた瞬間に香ばしい焦げ感があって麺の濃厚さとコクが特徴的ですね」  どうにも熱の入った紹介だと思ったら、この商品は大和氏ご本人が監修したラーメンだそうだ。自社の宣伝かと侮るなかれ。「実はこれ、僕が他にないラーメンを作りたいと思って、工場探しからはじめて、作ってもらったラーメンなんです。試作を101回も作ってもらったので本当に迷惑がられましたよ(笑)」と、情熱は尋常じゃない。 「ほとんどの食文化にはルールや慣習があると思うんですが、インスタントラーメンって、何をやってもOKっていう風潮があるので、昔ながらの製法を持ちながら挑戦もできるメーカーさんが残っているんですね。今回お願いした工場には、その挑戦をやっていただきました」と、インスタントラーメンの可能性を最大限に求めた渾身の作だという。インスタントラーメンに深遠な知見をもつ専門家が、情熱を傾けた一杯は食べる価値ありのはずだ。  インスタントラーメンといえば、規格が定められた味気のない食べ物だと思いがちだが、こうして話を聞いていくと「ご当地インスタントラーメン」の背景には各地方の「食文化」が広がっていることを感じられる。物理的な移動でなくても、これはまさに旅だ。この先も続きそうな巣ごもり期間の楽しみにしてみてはいかがだろうか。<取材・文/Mr.tsubaking>
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。
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