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これが夢の国の現実? 東京ディズニーリゾートが社員ボーナス70%減の深刻事情

現金は潤沢なのになぜリストラ?

 それならば、なぜオリエンタルランドは大規模な人件費カットを決断したのでしょうか。具体的に同社の財務状況を見てみます。  休園が響いた2020年4~6月期の連結最終損益は248億円の赤字でした。7月1日に営業を再開しているものの、入場制限は続いており、2021年3月までに予定していた大規模なイベントはほぼ中止することも公表されています。表を見てください。現金および預金残高が2019年3月に比べて、急激に減少していることがわかります。 オリエンタルランド 流動資産19年3月3775億円 20年3月2611億円(1160億円・30%減少) 20年6月1780億円(831億円・32%減少)  つまり、現金が1年3か月で約47%減少(1995億円減少)しているのです。特に、直近の2020年3~6月の3か月間は閉園も余儀なくされていたため、831億円の減少。現在も50%以下の入場者数での運営を行うなど、通常通りの営業が難しい状況にあります。では、オリエンタルランドの体力はあとどれくらい残っているのでしょうか。  キャッシュの減少が直近3か月の減少額である831億円の7割掛けで減少したと試算すると…。 831億円+(581億円×3四半期)=2576億円  つまり、この先何もしなければ年間2576億円のキャッシュが減少していくことになります。(※3~6月と全く同じ金額が減少し続ける場合は3324億円の減少となる)  このままではキャッシュが底をついてしまうのです。そこで目をつけられたのが人件費だったのです。 オリエンタルランドの人件費は、2020年3月期の有価証券報告書によれば、 142億円(給与・手当)+業務委託費(91億円)=約233億円  となっています。このうち、仮に約700人の退職・契約期間を満了とした場合、年間約39億円の人件費が削減できる試算になります(※対象1000人のうちの7割が対象・契約期間満了とした場合)。  この決断をしなければならないオリエンタルランドが差し迫った状況であることが伺えるでしょう。では、同社はこの先も現金が減っていき、やがて資金が底をついてしまうのでしょうか。そんなことはないのです。
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起死回生の一手とは?
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経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi

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