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これが夢の国の現実? 東京ディズニーリゾートが社員ボーナス70%減の深刻事情

起死回生の一手、二手、三手があった

 なぜオリエンタルランドに希望が持てるのでしょうか。実は同社は、最悪のシナリオをすでに想定して動いていると見られるからです。その根拠が、社債発行。オリエンタルランドは、9月10日に総額1000億円の社債の発行条件を決めています。同社としては1998年以来、22年ぶりの大型発行です。調達資金は2024年3月期に完成予定のパーク拡張工事などの投資に充てる予定です。  また、銀行からの融資も確保しています。銀行があらかじめ設定した金額の上限内でいつでもお金を借りられる融資枠(コミットメントライン)の契約を結んでいたのです。本来、オリエンタルランドは投資資金を営業キャッシュフローでまかなう計画でしたが、入園者数の制限で収入が減少しています。さらにコロナの長期化も見据えて、5月には銀行との間で2000億円の融資枠を設けています。  そう、同社は計画的に資金調達を行っていたのです。

GoTo “東京解禁”が舞浜にマネーをもたらす

 まだ、秘策はあります。10月より政府のGoToトラベルに東京発着の旅行が加わります。この東京解禁は大きな意味を持ちます。  東京ディズニーリゾートは千葉県に位置しますが、GoToトラベルの対象エリアに東京都が加われば、全国的に人の移動が急増するのは間違いありません。東京への流入増加は、千葉を含む近郊都市への波及効果も生み出します。つまり、オリエンタルランドもその恩恵を受ける1つなのです。

「美女と野獣」をテーマとした新アトラクション

 そして、3つ目の希望が新しいアトラクションのオープンです。9月28日、新たに「美女と野獣」、「ベイマックス」などのアトラクションがオープンしました。  もともと4月に開業予定だったこれらのアトラクション。ファンからの待望は大きく、イベントやパレードを引き続き自粛する中で、人気を集めそうなエリアとなっています。  さらにこの先、2021年度には「トイストーリー」シリーズをテーマとするホテル、2023年度には「アナと雪の女王」を含めた3つのエリアやホテルのオープンを計画しています。つまり、中長期的に見れば、集客力が高まる施策が行われているのです。
馬渕磨理子

馬渕磨理子

 Twitterを中心とするSNSでは、「東京ディズニーリゾートが営業しているってだけで元気をもらえる」といった声も多く見かけます。これは、オリエンタルランドの存在そのものが多くの人に勇気と元気を与えている証拠と言えるのではないでしょうか。  今回の厳しい決断も、“夢の国”を維持するたに“夢中”で実行した“現実的”な秘策なのだと筆者は考えます。 <文/馬渕磨理子>
経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi
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