デジタル化が遅れている日本を、どう変えたらいいのか?/佐藤優
菅首相は、新政権の目玉として、デジタル庁の創設を掲げました。今後、医療、教育、行政の分野でデジタル化が急速に進んでいくと思います。しかし、その結果もたらされるのは、いいことばかりではありません。私は京都の同志社大学と同志社女子大学で、今年の春学期はリモートで授業を行いました。教育にデジタルを導入すると、できる学生とそうでない学生の格差が拡大します。
基礎学力に欠損がある学生ほどアクティブラーニングのまねごとのようなことをしたがります。基礎知識を欠いていても、パフォーマンスでごまかせると思っているのでしょう。顔を突き合わせていると、学生のこういったパフォーマンスに騙されることがありますが、デジタルですと課題を与えて、結果を文章で求めることが多いので、パフォーマンスが通用しにくくなります。
教育においても医療においても、対面でないと伝えられない事柄があります。デジタル化が進むとアナログな人間的接触の価値が高まります。その結果、「デジタル+対面」の機会に恵まれている人が社会の上層部を、もっぱらデジタルだけを使う人が中堅、デジタルを使うことができない人が下層を占めるということになります。デジタルの普及によって日本の格差は一層拡大します。
★今週の教訓……デジタルの普及で、格差は一層拡大します’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数
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