「菅さんは霞が関をめちゃくちゃにした張本人」女帝に刺された男・小林興起が語る
学術会議の問題を受け、菅義偉首相の強引な政治手法に批判が集まっている。元自民党衆議院で、現在は「新党やまと」の代表を務める小林興起氏(76)は、「菅首相の政治手法の源流は小泉政権にある」と喝破する。
小林興起(こばやし・こうき)
1944年生まれ。66年に東大法卒、通商産業省(現・経済産業省)入省。ペンシルバニア大学大学院でMBA取得。83年に通産省退官、衆院選に出馬するも落選。90年の衆議院選で初当選。2002年には小泉政権で財務副大臣を務める。05年7月の郵政民営化法案に反対し、「郵政解散」で自民党を追放され落選。09年8月の総選挙で民主党比例区東京ブロックから出馬し、衆議院5期目の当選を果たすが、12年に消費増税に反対して同党を離党。2012年12月の衆院選に日本未来の党から立候補するも落選。以降、複数の政治団体を自ら立ち上げ、政治活動を継続している。
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――菅首相が日本学術会議が推薦した候補者6人の任命を拒否した問題がありました。歴代首相は形式的な任命のみをしてきましたが、今回は理由を明確に説明しないまま、一部の候補者の任命をやめてしまった。学問の独立を軽視し、「政府の意向に沿わない学者は任命しない」と捉えかねない行為だと批判されています。
小林:学問といえば、昔は勉強できる人が総理大臣になっていたんだけど、最近は小泉さんにしても、菅さんにしても、小池百合子さんにしても、どういうわけか、あまり勉強をしないタイプの人のほうが政治家として出世する傾向はありますよね。もちろん、勉強ができればすべていいというわけでもないけどね。
残念ながら、時代が変わったんですな。私は父親に、「お前、政治家になるなら、勉強しなきゃだめだよ。勉強して、いろんな知識を身に着けて、立派な政治家にならなきゃ」なんて言われたもんですよ。まあ、勉強すれば学校にもいけるから楽だっていうのもあるけど。
いまは私みたいに、勉強しちゃうと、どういうわけか選挙にも勝てないんですよ。うちの息子は一番下が小学校6年生だけどね。上が中学2年と高校1年。3人とも勉強しないですよ。一致してて。なぜ勉強しないかというと「お父さんみたく失業してね、お母さんが苦しむって」って(笑)
――夕食の時に、家族で一人だけとんかつがでてこないとか……。
小林:そんなの最初からでてこないよ。もう浪人生活が長いし、貧乏なんだからね。もしみんなの分があまったら、私にやっと回ってくるというね。勉強した結果、そうなるわけだからね。小泉さんみたいな総理にむけて、「あんた頭がたりない」なんていうふうに考えて、反乱起こした末路がこれですよ(笑)
――菅さんはどうなのでしょうか? 首相動静を見ると、常に人と会っている。本を読んで、沈思黙考するタイプではなそうですよね。
小林:菅さんには、失礼だけど、正直言って、インテリというタイプではまったくないでしょう。そういう意味では、学問への畏敬の念がないから、学術会議の件も発生したともいえるでしょう。
――小林先生が、いまの自民党をつくったきっかけとしてあげるのが、2005年小泉政権下での郵政解散(※)ですね。確かに、二階俊博幹事長は郵政解散のとき総務局長で、“刺客”の擁立に尽力しました。その刺客になったのが、小池知事です。菅さんも郵政解散後に、総務副大臣のポストを得て、頭角を現した。あのとき、勝ち馬にのった人たちはいま出世していますね。
(※)郵政解散:小泉政権下で行われた2005年9月の第44回総選挙のこと。小泉純一郎首相(当時)は、参議院での郵政民営化法案の否決をきっかけに、衆議院を解散。郵政民営化法案に反対した自民党議員に公認を与えず、選挙区に「刺客」を擁立するなど、前代未聞の強引な手法をとった。しかし、小泉首相はマスコミ世論を味方につけて、自民党は296議席を獲得する圧勝におわった。
小林:要するに、あの時に学問して、こだわって、論陣を張った人は全部だめになったんです。権力には、政権にはどんな意見があっても、賛同する。これしかないじゃない。
小泉さんもたいしたもので、自民党も地方議会もぜんぶ反対したのにも関わらず戦って勝ったわけだからね。小泉さんも勝ち負けという意味ではすばらしいのよ。郵政民営化というのは、アメリカ通商代表部(USTR)作成した「日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本政府への米国政府の年次改革要望書」というのに書かれていた。
それを、全国民を敵に回してでもやろうとしたのが、小泉さんであり、竹中平蔵さんだったわけです。こんな立派な人いないですよ、国民のいうことを聞かないで、アメリカのいうことを聞くって。ましてや、当時、ぜんぶテレビや新聞は小泉応援していましたからね。
――小林先生も、自民党を除名され、地元の東京10区に“刺客”として送られてきた小池知事に選挙で敗北しました。
小林:めちゃくちゃでしたよ。討論会やろうといったって、議論にならないんですよ。唯一、意味があったのは、外国人特派員協会の討論会ですよ。その時の小池さんの返事が素晴らしかった。「私は忙しい大臣だから郵政法案みていない」。えっ、あなたは郵政民営化を推進するために、この選挙区にきたんじゃないのって……。議論にならないんだ。
アメリカがなぜ年次改革要望書で郵政の民営化を求めてきたのかというと、ゆう貯の莫大な資産に目をつけてきたわけだと私は思っている。民営化っていうのは民間の資本になるわけです。そうすると、郵政の運営は、株をたくさん買うアメリカの影響下に置かれるし、アメリカに利益が吸い上げられるわけですね。こんなものに反対するしかないというのが私の考えでした。
学問をすると「選挙に落ちる」
いまの自民党を作った「郵政解散」
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1944年生まれ。66年に東大法卒、通商産業省(現・経済産業省)入省。ペンシルバニア大学大学院でMBA取得。83年に通産省退官、衆院選に出馬するも落選。90年の衆議院選で初当選。2002年には小泉政権で財務副大臣を務める。05年7月の郵政民営化法案に反対し、「郵政解散」で自民党を追放され落選。09年8月の総選挙で民主党比例区東京ブロックから出馬し、衆議院5期目の当選を果たすが、12年に消費増税に反対して同党を離党。2012年12月の衆院選に日本未来の党から立候補するも落選。以降、複数の政治団体を自ら立ち上げ、政治活動を継続している。
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