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先端技術への投資に異を唱えていた日本学術会議/国防ジャーナリスト・小笠原理恵

昭和の産物・日本学術会議と行政改革

 日本共産党の機関紙『しんぶん赤旗』のスクープに端を発した日本学術会議の「任命拒否」問題を巡っては、今も『朝日新聞』や『毎日新聞』といったリベラル系メディアを中心に批判の声が渦巻いています。批判は、菅政権が日本学術会議の推薦した会員候補105人のうち6人を任命拒否した判断について、「学問の自由」を侵害する可能性があり説明責任を果たしていない、というものです。
日本学術会議HP

日本学術会議のホームページ

 ただ、日本学術会議は内閣府の行政組織であり、職員は特別職の国家公務員となります。年間予算は10億円で会員210人、連携会員2000人おり、その任命権者は内閣総理大臣となっています。実は、2018年11月に内閣法制局が「日本学術会議推薦した候補者すべてを採用しなければならない義務はないこと」を了承しており、安倍政権下でも2016年には3人の欠員を補充しませんでした。つまり、「任命拒否」は今回が初めてというわけではありません。  この「任命拒否」問題をきっかけに日本学術会議がクローズアップされ、さまざまな問題が明らかになってきたのも事実です。たとえば、日本学術会議は法律で政府に勧告することができると規定されていますが、この政府への勧告も10年間にわたって途絶えていました。総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)など時代に即した科学技術を推進する会議が頻繁に開かれるなか、日本学術会議もまた内閣府の行政組織でありながら何をしていたのでしょう。  こういった事態を受けて、10月8日、河野太郎行革担当相は「予算や機構、定員について、聖域なく、例外なく見ることにした」とコメント。自民党の下村博文政調会長も、同会議の非政府組織化も視野に早期に党の提言をまとめると発言しています。

軍事的安全保障研究を拒絶する日本学術会議

 日本学術会議はホームページによると、同団体は昭和24年に発足。科学の向上発達を図り、行政、 産業及び国民生活に科学を反映、浸透させることを目的に活動しているそうです。しかし、日本学術会議が設立された昭和と現在では大きく環境が変化しています。昭和の価値観を引きずる組織ではさまざまなズレが生じているようです。
会議室

写真はイメージです(以下同)

 例えば、日本学術会議は平成29年度に「軍事的安全保障研究に関する声明」を出しています(同様の趣旨の声明も入れると計3回も!)。  これは文字通り、「軍事目的のための科学研究を行わない」ということです。昭和の昔であれば軍事研究と民生分野の間には垣根があったのかもしれません。ですが現在、私たちの暮らしを豊かに彩ってくれているインターネットやGPS、小型ドローン技術などは軍事研究から生まれた賜物であり、AI技術、燃料開発、蓄電池、そして医療・ワクチン開発など、世界中の人々の生活に多大なる恩恵を与えてくれる最先端技術のほとんどが軍事技術に転用可能と言える。  たとえば、軍事用ドローンはテロとの戦いでテロリストの拠点を攻撃するためにも使われてきました。日本学術会議の基準では軍事転用可能な研究に当たると思います。しかし、米国では荷物を玄関前に置くことが許されていますから、ネット注文の配達に大活躍しています。日本でも人が簡単に近づくことのできないダムのメンテナンスや補修作業、山間部の広大な農地や森林の生育状況の調査や農薬の散布といった分野にドローン技術は使われています。軍事転用に可能だからと、こういった今後発展していく最先端の研究を一切「放棄」した学術会議に存在意義はあるのでしょうか?
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「国際リニアコライダー計画」への反対
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