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渦中の「日本学術会議」と中国の関係/国防ジャーナリスト・小笠原理恵

米中対立と安全保障と一体化する国際経済

tiktok 米国では、ByteDance社の動画共有アプリ「TikTok」(ティックトック)が子供たち(未成年)を含むユーザーの生体情報を違法に収集していたとして裁判が起きています。ユーザーの年齢や人種、身体的特徴で動画コンテンツを推奨する目的で「顔の形状スキャン情報」や「声紋」などが収集されていたというのが主な内容です。 「顔の形や声の情報が集められたからって、それがどうしたというの?」と、不思議に思う人もいると思います。なぜ、これが恐ろしいかを説明しますね。  集められたたくさんの「顔の形や声紋、身体的特徴の情報」は、中国のサーバーに送られます。ビッグデータは情報が多くなるほどAI技術を向上させ、ユーザーの嗜好を特定する「より精度の高いデーターベース」となります。しかも、それは商用に使われるだけではありません。  日本の防衛白書にも「中国は、従来から、緊急事態における民間資源の軍事利用(徴用を含む。以下同じ)を目的として国防動員体制を整備してきましたが、近年、国家戦略として軍民融合を推進しています」と説明があるように、商用情報も軍事転用される可能性があります。これが、安全保障上の問題とされる所以です。  中国には「天網」と名付けられたAI監視システムがあります。「天網」は蓄積された個人生体情報を使って、1秒で中国全国民の照会が可能です。2017年に米国メディアBBCのジョン・サドワース記者が、中国の貴陽市でこの世界最大の監視カメラネットワーク「天網」に自分の写真を重要指名手配犯として提供する実験をしました。  写真を提供後、身柄拘束までにかかった時間はわずか7分でした。つまり、写真提供された「天網」は即座に人物の位置を特定して警察を差し向けたことになり、まさに驚異の監視システムと言って差支えないでしょう。
監視カメラ

※写真はイメージです(以下同)

 このAI監視システムは現在、中東、アジア、アフリカ各国に輸出されており、監視できる地域はさらに広がっています。あちこちにある監視カメラ画像から自分の位置と行動を読み取られるなんて、想像するだけでもぞっとしませんか。中国には、もうプライバシーも隠れる場所もないのです。  前出のTikTokやTencent社の対話アプリ「WeChat」(ウィーチャット)をこの先も永遠と放置したら、米国ユーザーの情報が着々と中国企業に蓄積され続けるのですから、米国が安全保障上の脅威とみなすのも十分うなずけます。ただ、TikTokやWeChatに関しては、トランプ大統領がアプリの利用を実質的に禁じる大統領令に署名しましたが、表現の自由を侵害しているとの訴えが相次ぎ、配信停止直前で連邦地裁が差し止め命令を出しています。  この「国際経済安全保障」上の米中対立は、今後さらに激化するはずです。すでにモバイルネットワークのバックドアを懸念されたHuaweiなどの通信機器メーカーに対しては、追加の輸出禁止措置が9月に本格導入されました。

経済安全保障と日本学術会議

 中国では平成20年から海外のトップレベルの研究者を高待遇で招き、先端機微技術や研究成果の集積を行っています(いわゆる「千人計画」)。これに対して自由主義諸国は非常な危機感を持っています。 研究者『週刊新潮』10月5日号では、櫻井よしこ氏が連載コラムの中で、話題の「日本学術会議」の会員が2012年に中国の「外専千人計画」の一員となったことが指摘されています。ただ、これは、かなり前から中国で研究をしている人が日本学術会議にもアクセスした例ではないかと思います。  自民党の甘利明・元経済再生担当相が中国による科学者の招聘事業「千人計画」に「積極的に協力している」とブログに書き込んだことでネットは一時騒然としました。しかし、その後は加藤勝信官房長官も「中国の『千人計画』を支援する学術交流事業を行っているとは承知していない」と会見で否定しており、真相は藪の中です。しかし、どちらにしても、日本の貴重な人材がさまざまなかたちで外国に奪われている構図には警戒が必要です。
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中国に対して協力的な態度はどうなのか?
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