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リアル『下町ロケット』? 世界初「木のストロー」を実現させた女性社員の情熱

大反響を受け、会社が下した決断とは

 廃プラ問題が注目され、環境問題意識が高まるなか、木のストローの反響は大きかった。翌日から問い合わせが殺到し、メディアでも連日報じられた。  この大反響を受け、会社は木のストローを事業化し、自社で製造して木のストロー普及に努めることを決断した。 木のストローとグラス ちょうどそのころ、SDGsを推進する横浜市から、同市のシンポジウムで「木のストローについて紹介したい」という依頼が入った。横浜市は2018年に「SDGs未来都市」に選定され、そのキックオフとなるシンポジウムだった。  実は、一本の木のストローで、SDGsが掲げる「つくる責任つかう責任」「海の豊かさを守ろう」「陸の豊かさも守ろう」などいろいろな目標に貢献できるのだが、この時点ではまだ、「SDGsが何かよくわかっていませんでした」というのが西口さんの正直なところ。  ただ、シンポジウムの参加者に木のストローを配布したいという横浜市からの依頼を受け、自社で初めて製造する木のストローを納品することになった。

G20のすべての会合で木のストローが採用された

 それからほどなくしてビックニュースが飛び込んでくる。  2019年6月にG20の大阪サミットがあり、史上初の環境閣僚会合(持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合)が軽井沢で開催されることになっていたのだが、そこで木のストローが採用されることになったのだ。  新聞に掲載された木のストローの記事が、当時の環境大臣政務官の目にとまり、とんとん拍子で話が進んだ。  さらに他の省庁からも、G20で使いたいという問い合わせが入った。  大阪サミットの大きな課題の一つが海洋プラスチックごみ問題で、G20のすべての会合で、徹底してプラスチック製品が排除されることになっていた。  特に林野庁の人が木のストローを強力に後押しして、最終的には、G20の首脳会合と関連会合すべてで木のストローが採用された。
G20イノベーション展

G20イノベーション展で取材を受ける西口さん

 木のストローには人を呼びこむ力があるようだと、西口さんは感じている。環境閣僚会合の会場に併設された「G20イノベーション展」に出展したときのこと。木のストローがあまりに注目されるので、他の企業の方が「これ持っていると話しかけられるから」と、スーツの胸ポケットにさしてくださったそうだ。  後日開催された別の環境系イベントでも、目立たない場所にあった出展ブースの木のストローに人が集まり、会場の人の流れがかわるほどだったと言う。
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SDGsを考えるきっかけに
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木のストロー

「住宅会社がストローをつくってどうするんだ!」間伐材再利用と廃プラ問題解決のため、ど素人の住宅会社広報担当が「木のストロー」制作に立ち上がった。社内の反発、失敗続きの試作品、記者会見直前の大トラブル…。まるで「下町ロケット」のような開発実話!2019年G20で採用。地球環境大賞農林水産大臣賞受賞。
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