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政府が今国会で提出しようとしている特措法は、憲法違反のオンパレードだ/倉山満

今回の法制化は違憲のオンパレード

 過去の緊急事態宣言においては、「法律ではないので補償の義務は無い」との立場だった。だが、今回は法制化しようとしている。これが違憲のオンパレードだ。国会議員諸氏、立法府として以下の点を審議してほしい。  まず、イベントの自粛は集会の自由(21条)の制約である。交通制限は移動の自由(22条)。義務教育課程の学校を休業させると、教育を受ける権利(26条)。政府が強制的に仕事を奪うと、勤労の権利(27条)。これらの権利は公共の福祉(12条)に適った時のみ、制約する正当な理由がある。何でもかんでも「コロナだ」と言えば許される話ではない。さらに、「一部の業者にだけ補償」は法の下の平等(14条)に反する。  また、違反者には罰則を加えようとの内容がある。個人名や店名の公表権限を地方自治体に与えようとしているが、プライバシー権や肖像権(憲法13条の幸福追求権に含まれる)の侵害にならないのか。  休業要請に応じない場合には、過料を加えようとしている。一方で、「自粛警察」は野放しだ。連中は嫌がらせのように休業要請に応じない店に張り紙や落書きをしたり、あまつさえコロナ患者を出した銀行に石を投げ込んだりした事例さえある。これらすべて、本来ならば犯罪なのだが、政府は被害届を出すよう、推奨したらどうか。憲法第35条は住居不可侵の原則を定めているが、脅かされている。  以上は、即座に憲法違反に問うのは難しい事例だが、立法において国民の権利が侵されないよう、慎重に審議をすべきだろう。

重大な訴訟リスクを抱える問題

 一方で、重大な訴訟リスクを抱える問題がある。補償なき営業自粛の命令は、本人の責任が無いのに憲法29条で守られるはずの財産権の侵害である。同時に営業の自由(22条)の制約である。  今回の特措法は、「政府は罰則付きの命令を出せるが、補償は努力目標」である。最高裁が違憲判決を下せば、多額の賠償金を払わねばならない。政府は覚悟があるのだろうか。  多くの人がコロナ怖さに冷静さを無くしているから、あえて憲法の原理原則論で述べてみた。そもそも、補償が十分でないから、コロナが怖くても休業要請に応じられない人々も多いのだ。そんなに人の移動を制限したいのなら、経済活動を停止しても生活できるだけの補償をすればいい。仮にコロナがペストのような伝染病なら、1000兆でも1京円でも国債を刷って借金をすればいいだけだが、その勇気は無いようだ。  この状況では、誰が総理大臣でも支持率が下がるのは当然だろう。現在の菅義偉内閣も苦しんでいる。菅内閣は政策面では、尾身茂氏に依存しているようだ。今次新型ウイルスを、ペストのような危険な伝染病として扱っている。当然、尾身路線は自粛優先である。一方で、政局では二階俊博幹事長に支えられている。二階氏は、経済優先だ。尾身氏の助言に従って感染拡大防止に傾けば、経済が悪化する。二階氏は一連のGo To キャンペーンを求める。しかし、Go To キャンペーンで経済を回せば、コロナ患者は増える。 「見通しが甘かったのではないか」「なぜもっと早くGo Toを止めなかったのだ」などと責められる。  このジレンマに、「財務省を説得できないので金を出させられない」が加わりトリレンマだ。いずれにしても国民の不満が高まる。
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内閣の命運を賭けて、中央突破を図ってはどうか
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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