更新日:2021年03月20日 09:49
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“上級国民”の老人はなぜキレる? 被害者たちの声

「キレただけ」でも、懲役刑の可能性も!?

暴走老人

写真はイメージです

「キレただけ。何が悪い!」。 「エリート老人」の怒声が聞こえてきそうだが、特に職場でキレた場合、犯罪になる可能性は十分にあるのだ。前出の橋本佳代子弁護士は、最近の傾向をこう読み解く。 「近年、パワハラの被害を訴える雇用者の相談が急増しているが、特に中小零細企業には創業経営者も多く、これまでの自分のやり方に疑問さえ抱いていないワンマンな企業統治がよく見られ、パワハラが横行しやすい。  そのうえ、経営のトップが“昭和型”のエリート高齢者だった場合、転職組の社員などは自分とは違う畑で仕事をしてきた異分子に映るので、悪目立ちしやすく、キレる標的になりやすい。さらに、コロナ禍で多くの企業は経営が厳しく、経営者はフラストレーションを溜めてキレやすい状態にある」  被害を受けるのはいつも弱者だが、法的手段に訴えることは可能だ。文末に、キレるとどんな罪に問えるのかをまとめた。 「エリートの高齢経営者のなかには些細なミスをしただけで『明日から会社に来なくていい』『君とは合わないから辞めろ』などと口にする人も少なくないが、そう簡単に解雇は有効にはなりません。日常的に『殺すぞ』『アホ』などと言うのは当然パワハラであり、慰謝料を請求することができます。ただ、確実に裁判で勝つために、暴言を録音しておくといいでしょう。  (前出の)『横領している』と言いふらされたBさんのケースは、名誉棄損罪に該当し、法定刑には3年以下の懲役も含まれる。また、(前出の)Cさんのケースで、昼休みを30分にしろと強制していれば、労働基準法34条1項違反で、罰則は6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金とされている。キレただけのつもりでも、民事だけではなく、刑事責任を問われることは十分あるのです」  今後、企業の経営悪化が予想され、さらなる被害が増えそうだ。

キレただけで●●罪に!?

飲食店で大騒ぎする高齢者グループを店員が注意すると、「オレたちは騒いでいない!」と大声で激ギレ。机を叩いて猛抗議→威力業務妨害罪 スーパーで店員が高齢者客に品物を渡すと、コロナを恐れて「感染したらどうする!」と罵詈雑言。代金を投げつけた→威力業務妨害罪・暴行罪 老人ホームで入居者が女性職員の体を触りセクハラしたが、拒まれて逆ギレ。大勢の前で「このクズ、デブ!」と大声で罵った→侮辱罪 高齢経営者のパワハラでうつを発症した職員が休職を申し出るとキレて、休職中、「あれは詐病。横領もしている犯罪者」とあらぬことを言いふらした→名誉棄損罪 会社の方針に社員が意見すると社長が激ギレ。「黙れ!殴られたくなかったら土下座しろ」と迫った→強要罪
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和田秀樹氏

【精神科医・和田秀樹氏】 専門は老年精神医学など。国際医療福祉大学大学院教授。和田秀樹こころと体のクリニック院長。心理学、老人問題に精通する
暴走老人

橋本佳代子氏

【弁護士・橋本佳代子氏】 師子角総合法律事務所。労働紛争のハラスメント事案を多く手がける。マタニティハラスメントにも精通し、多岐に渡り活動
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岡本純子氏

【コミュニケーション・ストラテジスト・岡本純子氏】 グローコム代表取締役社長。近著に、12万部超のベストセラー『世界最高の話し方』(東洋経済新報社)などがある <取材・文/齊藤武宏 山本和幸 写真/朝日新聞社 時事通信社>
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