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日米vs中国の対立激化で緊迫化する尖閣問題。地元漁師も不安の声

「尖閣諸島に領土問題は存在しない」――。日本政府は約50年間、このスタンスを貫き続けているが、尖閣周辺海域の環境は今年2月に施行された中国の海警法の影響で激変。現場の海人(漁師)は、この事態をどう見ているのか。現地で話を聞いた。

海人が最も恐れるのは石垣島周辺の漁場の減少

尖閣

“CHINA COAST GUARD 中国海警”と書かれた中国公船。2月中だけで26回も尖閣沖で目撃されている(写真提供/仲間均氏)

 荒波のなか、海上保安庁の巡視艇に並走される一艘の漁船。その後方には「中国海警」と書かれた船舶が、ぴったりと追尾してくる――。  2月15日、石垣市議の仲間均氏が漁船から撮影した映像の一コマだ。撮影地は尖閣諸島の魚釣島から6マイル(約10㎞)南の海上。まぎれもなく日本の領海での出来事である。この追跡は翌日まで続き、海警局の船舶は23時間にわたって日本の領海内にとどまったという。  今回、私財を投じて購入した漁船で尖閣諸島周辺海域まで航行した仲間均氏は、過去16回にわたって尖閣諸島に上陸するなど、20年以上にわたって問題に取り組んできた人物だ。そんな仲間氏は自らの活動についてこう話す。 「まず、私は石垣市の議員としてこの現状を国民に訴えるためにやっています。私の名前を語ってカネ集めをしている団体もいるが、私はどんな組織にも所属していない。もちろん漁船登録をして、水産庁の許可も得ている。  石垣周辺近海は近年、あまり魚が獲れないんですが、尖閣は高級魚のアカマチをはじめ魚種も豊富。普段は潮の流れが激しくて、餌が深いところまで下りていかないのですが、4月くらいまでの時期は潮止まりがあって餌が落ちるので、格好の漁場になります。  ただ、今回もそうでしたが、操業していると機関砲を搭載した中国公船が現れ、我々の船から40mくらいまで接近し、ジェットエンジンをふかし、魚を追い払ってしまう。これでは漁なんてできたもんじゃない。こうした状況を改善し、八重山の漁師が安心して尖閣で操業できるようにすることが、私の市議としての使命だと思っている」

2月1日の「中国海警法」施行

尖閣

石垣市議会議員・仲間 均氏

 そんな仲間市議に立ちはだかった中国公船は、このところ尖閣諸島周辺での活動を活発化させている。海上保安庁によると、2月1日からの1か月間で、尖閣諸島周辺の領海外側の接続水域で中国公船の航行が確認されたのは計26日。さらに領海侵入が確認されたのは計6日で、そのうち計5日は日本漁船を追尾している。  そのきっかけとなったのが、2月1日の「中国海警法」の施行だ。中国の武装警察傘下の沿岸警備機関「海警局」が、中国の主権や管轄権を侵害している軍艦、公船、民間船などの外国船に対し、搭載している機関砲などの武器使用を含めて、あらゆる措置を講じることを認めるものだ。  日本政府は海警法への対応措置として、外国公船・軍艦が日本に上陸する目的で領海に侵入した場合に限り、海上保安官による「危害射撃」が可能との新たな見解を示した。だが、中国が勝手に主張する“領海”に日本の船が立ち入れば、たとえ民間の漁船でも武器使用が認められる海警法とは雲泥の差がある。
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石垣島の漁民からは不安の声
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