なぜ文春砲だけが特別なのか。元編集長が明かす秘密組織の実態
検事長の賭けマージャン、元法務大臣の選挙不正、総務省の接待問題、そして東京オリンピック開会式をめぐる騒動……芸能スキャンダルだけでなく、政界にも“文春砲”が轟く。
「正剛(せいごう)、正剛、正剛。古巣の文春で私の名前が叩かれるのは奇妙な感じです」
「週刊文春」と「文藝春秋」の編集長を務めた木俣正剛氏は、37年間におよぶ記者生活の日々を『文春の流儀』(中央公論新社)にまとめ、3月に出版した。
奇しくも、菅義偉首相の長男・正剛氏が総務省幹部たちを接待していた問題が文春報道によって明るみに出た時期だった。
「名前の由来まで同じ。東条英機に反抗し、自決したジャーナリスト出身の政治家である中野正剛にちなんだようです。本が出るタイミングでの“文春砲”に、私も困っています(笑)」
1978年、文藝春秋社に入社した木俣氏は、花田紀凱編集長のもと、西川清史、勝谷誠彦、松井清人らと共に黄金期を築く。
「当時の会社全体の売上は、編集(雑誌売上)100億、広告100億、出版100億。営業にも力があり、財政基盤が盤石で、取材費は潤沢でした」
出版不況とはいえ、今でも文春の取材費はケタ違いだ。スクープだと記者が思えば、百万円単位の取材費を投入することもある。
「総務省官僚の接待スクープ。一人5万を超える高額な値段ですが、宴会の部屋にも文春の記者は潜入して写真を撮影しています。接待の舞台は、会員制のラウンジレストランなので、記者が足を運んだのは一度や二度ではないでしょう。文春の記者は誰も接待してくれないので、すべて経費ですよ(笑)」
週刊文春の編集員は60人程度。グラビアや連載の担当者を除く、スクープ(特集)班を担当する記者は40人にも満たない。数千人規模の大手新聞社とは比べものにならないほど小さな組織であり、さらに記者クラブにも属してはいない。
それなのに、なぜ文春だけが大手メディアでもできないスクープを連発するのか? 元「週刊文春」編集長で、現在は岐阜女子大学副学長の木俣正剛氏に、文春だけが特別な理由を聞いた。
文春に叩かれる?
ケタ違いの取材費で、高級接待の場にも同席
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ