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物が盗まれる激安シェアハウス、アイスを餌に罠を仕掛けた結果は

多発する入居者たちのトラブル

「北(仮名・30代)は最初からとんでもない奴でしたね」  橋本さんはウンザリしながら呟いた。とんでもない入居者は家出青年だけではない。 【参考記事】⇒月収12万円のフリーターがシェアハウス経営に挑戦「家賃を払ってもらえない」    北という男性は、コロナ失業をきっかけに地方から出てきた。橋本さんは彼にバス賃を工面したうえ、食事の面倒もみてあげた。しかし、ろくに働こうともせず、家賃も払わなかった。橋本さんはUber Eats配達員の仕事を紹介し、自転車も貸してあげた。そして、「とにかく働いて家賃と貸している分を返してくれ。そうしないと〇〇日までに出て行ってもらいます」と強く警告していた。 「あれから家賃はギリギリ払っていました。でも、冷蔵庫に入っている他の住人の物を勝手に食べて、タバコもくすねていたらしく、トラブルになりました。貸しているお金もあったので、迷った挙句、とりあえず埼玉の方に移ってもらったんです」

アイスクリームを餌に罠を仕掛けた

 ちょうどそんな話を聞いていると、前出の三嶋さんがやってきた。 「北は、最初はごく普通でした。ただ、仕事も探さずにフラフラしていました。僕は料理が好きなのですが、彼がお金がないのを知っているから、食べさせてあげていたのですよ。  そんな恩があるはずなのに……。彼は、ちょくちょく冷蔵庫に入れた僕の食べ物やお酒を盗むようになりました。犯人が彼ということは明白でしたが、さすがに証拠はないので黙っていました。  そこで、管理人に相談して、罠をしかけたんです。シェアハウスに彼しかいない状況で、アイスクリームを数個買っておいたんです。案の定、無くなっていて」  盗み癖がある男を置いておくわけにはいかない。橋本さんは、退去命令をくだした。彼はお金がなく、行く場所はないはずだが、仕方のないことだ。  結局、最後まで「自分はやっていない」と言い張っていたが、翌日シェアハウスを去ったのであった。激安シェアハウスの経営はかなり大変なようだが、それでも、やっぱり、橋本さんの表情は明るかった。 <取材・文/今永ショウ>
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